取り越し苦労


「白か黒。二択」
「黒」
「可愛い系とセクシー系」
「可愛い系」
「フリフリ?」
「…まあ、少しは」
「紐のやつ?」
「…」
「うわ、引くわ」
「何も言ってない」
「まじ引くわー」
「…佐久間、おまえが正直に言わなきゃ殺すとまで言ったんだろ」
「いやあー黒でフリフリで紐かよーおまえそんなんが好みだったんだー」
「白でもいいがな。佐久間の肌に綺麗に映える」
「なぁに開き直ってんだよ」

ベッドの上で、俺の足の間に収まって佐久間が読んでいるのはは下着のカタログ。居たたまれない気持ちでいる俺とは対照的に、佐久間は先程からきゃっきゃと楽しそうに笑っている。どうやら今日の佐久間は随分と機嫌が良いらしい。

「じゃあーこれとかは?」
「ああ、いいんじゃないか」
「これとこれなら?」
「こっち」

カップが上がったんだ!と佐久間が家に押し掛けてきたのが今から約一時間前(初めは何のことだかさっぱりわからなかった)
俺の部屋に入るなりカタログを取り出し自慢気に見せ付け、『彼氏なんだから協力しろよ!お前に見せる為に買うんだから』なんてそんなこと言われれば、断る理由なんて何処にもなかった。

そして今に至る。


「これ着けたら源田、喜ぶ?」
「え、ああ、そう、だな」
「ムラムラするか?」
「っ、ムラムラって、おまえ」
「これ着けたら、襲ってくれるか」

一瞬、何を言われているかわからなかった。からかわれているのだと理解し笑って佐久間の顔を見れば、意外にも真剣な表情をしていて、それを見てやっと先程の言葉を本当の意味で理解することが出来た。佐久間を後ろから力いっぱい抱き締め首筋に顔を埋めると、香水なんかじゃない佐久間の甘い香りがする。

「佐久間は、魅力的だ」
「なんだよ、急に」
「事実だ」
「…うっせえ黙れヘタレのくせに」


そのまま真っ赤になった耳に唇を落とすと、カタログで思いっきり殴られた。

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テーマ「人外ファンタジー」
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