隣にはカミサマ


俺にとっての、カミサマみたいな存在だったんだと思う。

すきでだいすきで憧れで、そんな人を俺が独り占めしたいだなんて、何ておこがましい。受け止められる事なんて絶対にありえないと思っていた。それなのにそれを許してくれた。嬉しいと言って笑ってくれた。いつまでも一緒ですなんて、そんな事も何度も口にした。その頃は、世界を全部手に入れたみたいな気持ちだった。

ただ、それを信じていられた期間というのはあまりに短かった。少なくとも、俺にはそう感じられた。

幸せは長く続けば続く程怖くなるものとはよく言ったもので。いつしか見え始めた未来。それは年を重ねる毎にどんどんどんどん狭まって、いつしかひとりで通るのがやっとな程になっていた。
手を離したのは俺の方からだった。俺が言わなきゃ、彼はずっと隣に留まるだろうから。優しさのつもりだったのか、怖じ気づいたのか、よくわからないけれど。多分両方。(俺が、彼ひとりくらい抱えて走ってあげられたらよかったのに。そんなこと今更、どうしようもないけれど)

結局俺にとって彼は眩しくて、遠い存在だったのだ。いつも心のどこかで二人の間の埋まる事のない距離を感じたままだった。彼はいつだって自分の気持ちをそのまま直球で伝えてくれた。それに反比例するように、俺は昔が嘘みたいに、どんどんどんどん何も伝えられなくなっていった。嘘を吐いているようで苦しかったけど、さらけ出す方がもっと苦しいと思った。でも今思えば、そんな俺の考えなんてずっと前から見透かされていたんだと思う。

『俺、立向居がすきだ。この大きな手が、すげぇすきだ。一生、忘れない』

『一生一緒に居れるって言葉、俺は疑ったことなんてなかったよ』

そう言って俺の為に一生懸命笑って泣いた彼の顔が、今、目の前で泣いている女性と重なる。幸せそうに涙を流すその女性の隣で、彼は照れくさそうに笑っていた。太陽みたいな笑顔だった。俺にとっては、懐かしい笑顔だった。

彼の正装はライオコット島に居た時に一度だけ見たが、大人になった今でも、あまり似合っていないと思う。そう言ったら、お前は何でも似合うからいいよななんて返されて、返答に困ってしまった。
やはり何年経っても、俺の中での彼はラフな格好で太陽の下で笑っているような、そんなもので、だから、今だってこんなに実感がないのかも知れない。
過去は幸せだけど、いつまでもそれに浸かっている訳にはいかない。それは、俺が何よりも一番自分自身に言い聞かせていた事なのに。
(成長してないのはきっと、俺だけだ)




「結婚、おめでとうございます」



綱海さん。
俺の、カミサマ。
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