まさにミラクル!


俺は魔法が使える。いつからか、そんな事はわからないしもうずっと昔の事だと思う。そう、よくよく考えてみればすぐにわかることだった。嫌でも理解せざるを得ない程に、事実、俺の周りにそれがごろごろ転がっていたのだから。

自分が、どちらかと言えば女顔、少し良く言えば中性的な顔立ちをしているという自覚はあった。昔から積もりに積もって重なって、嫌と言う程の経験上、わかりきっている事。事実だ。
そんな俺に寄ってくる奴は決して少なくはなかった。欲にまみれた気持ち悪い顔を何度も何度も見てきた。だからと言って誰にも言える筈もなく、時々夢の中でそいつらを殺したりしてた。

いつしか、俺はそれを逆手に取り支配する術を覚えていた。それは、念じながら相手の名前を呼ぶ。それだけ。それだけで簡単にみんなが俺に夢中になった。男なんて簡単な生き物で、本格的に落としてしまえばこっちのもの。その魔法にかけられた奴らは俺のことを文字通り“愛する”ので、一方的にただぶつけられて来た今までよりずっとずっといい。大切にしてくれる。愛してくれる。俺の言うことを何でもホイホイ言う事を聞く俺の兵隊だ。俺はそれからずうっと、気分が良かった。

そんな俺に、生まれて初めて本気で欲しいと思う人が出来た。愛されたいと思った。名前を呼ぶだけでこんなにも苦しい気持ちになるなんて初めてだった。俺は魔法にかけられたみたいだった。

一度だけ、聞いてみた事がある。風丸さんは魔法使いなんですか?って。風丸さんは笑って、そんなわけないだろって笑って、俺の頭を撫でた。

それから、俺から仕掛けた魔法は何時まで待っても発動しなかった。

これは俺が本気になったからなのだと思った。きっと、本気で惚れた相手には効かない魔法なのだ。そう思っていた。

でもある日、俺は見てしまった。彼が見つめる先を。その目が、全てを語ってくれた。そして直感的に理解した。本命がいる相手には、効かない魔法なのだと。俺が想ったからじゃない。彼に、他に想い人がいるから。そんな、何てことない理由で、俺の力は失われたのだ。なんて、脆い。


「風丸さんは、魔法使いなんですね」
「なんだ宮坂。またその話か?」


俺なんかよりずっと優秀な魔法使い。だから俺の魔法なんて、簡単に跳ね返されてしまうのだ。風丸さんが自ら望まない限り、俺のそれが届くことなんて一生ないのだ。
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