不覚にもトキメキました


毎日が日曜日ってきっとこういうことだ。そうして完全に曜日感覚を無くして早一ヵ月。バイトしてみたり友達と出かけてみたり小旅行してみたり家でだらだら引きこもってみたり、そりゃもう全力で夏休みを漫喫しまくっている大学生。別に羽目を外しまくって飛行に走ったりなんてこともなく、ごくごく普通にそれなりに楽しく過ぎてく毎日。もう成人迎えた男が今更飛行ってのもあれだけど

今日の最高気温は28度。(もう9月なのに異常すぎる!)朝からそんなこと知ってしまったからには、安易に外に出るわけにはいかない。そうして今日一日家の中でだらだらすると決めた俺は、テレビを見たり撮り溜めてたドラマを見たりしてるうちにあっと言う間に時間は過ぎていったらしく、もう外の景色が少し暗くなっていた。夜ごはん何にしようかなんて考えなきゃいけない時間だ。けどなんか考えるのも作るのもめんどくさくなってしまったので、テレビの電源を切ってソファに寝転んだ

「1ヵ月と、5、6…もう1週間か」

最後に会ったのは8月に入って直ぐ。つまり夏休みに入ってからは今の一度も顔を合わせていない。滅多に会えなくて連絡もくれなくて、俺達本当に付き合ってるって言える?なんてことは全く思わない。仕事が忙しい彼に対して、仕事と俺どっちが大切なの!?なんてことも思わない。全く。それは強がりとかじゃなくて、これが俺達だから。俺はそんなヒロトが好きだし、ちゃんと愛されていると感じる。だから不安はあまりない。ヒロトも同じ気持ちだからこそ、側に居てくれるんだろう。ただ全然寂しくないと言えば嘘になる。俺にだって人並みにそういった感情は、ある。一応

クーラーが効いた部屋でただ携帯を眺めていた。クーラーの温度設定は18度。流石に下げすぎたなとは薄々感づいているものの、リモコンを取りに立ち上がるのが面倒だからそのまま放置すると決めた。そんな中携帯を開いて閉じて、また開いてをさっきからずっと繰り返してる。パチンパチンと言う音だけが、部屋に響く。

(『俺は豆腐とわかめがいいなぁ』だって。なんか、ばかっぽい)

最後に届いたメールの内容はこれだった。ヒロトは、忙しいと極端に食事を採らなくなる。そんなヒロトが、緑川の作った和食が食べたいと言ってくれた。それに対し『あなた、味噌汁の具は何がいーい?』なんて俺のふざけたメールに対する返事が、最後のメールだ。(突っ込んでくれるのを期待してたのに普通に返されたのは結構恥ずかしかったけど)

「8月、27日…」

止まったままの受信ボックス。フォルダ名、ヒロト

(あ、だめだ、だめだめだめ)

名前を見たら、会いたくなってしまった。どうしようどうしよう、すごい寂しい、かもしれない。そう思ったら一気に転がり落ちた。

(あいたいあいたい、寂しい、辛い)




「なんで連絡くれないの!!」
「いやーしたよ?メール見ただろ?」
「こんな家到着してからの玄関前で送ったメールなんて全然意味ないでしょ!もっと前持って連絡入れろって言ってんの!」

ついさっき感傷に浸っていたのが5分前。久し振りに届いたメールは、家のドアの前に立つ彼からだった。突然の登場にこっちはもちろん何の準備も出来てないわけで(部屋着で髪はぼさぼさだし最悪だ最悪すぎる。久々の再開がこれとか。まじで泣きたい)

「早く言ってくれれば、もっと…もっとちゃんとしたのに…信じらんない」
「俺は、どんな緑川でも好きだよ?今も全然可愛いと思うし。あ、キスしていい?ただいまの」
「…ぐだぐだで部屋着で寝起き顔で髪ぼさぼさな俺が好みなの?」
「そんなの、緑川だったら何でもいいよ」
「…とりあえず豆腐とワカメ買ってくる。そこ退いて」
「そう言うと思って、俺が買って来た」
「そういう事すんのやめてよ心臓保たないよ」

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