愛に答え等必要ない


「風介、胸でかくなった?」

あ、と思った瞬間にはもう遅く、背中のホックがプチンと外れた。やっとの思いで気怠い身体をベッドから引き剥がしブラウスを拾いあげたというのに、またシーツの中に逆戻り。

「晴矢。学校に遅れる」

昨日はせっかくの休日だというのに生憎の雨だった。久し振りに出掛けようかという計画は消え、結局はいつもと同じ、晴矢の家で一緒に食事をしてそのままお泊まり、というなんだかんだで定番の流れを辿ってしまった。それはまぁいいとして(いや本当はよくないけど)、今日は月曜日だ。昨日は泊まるつもりなんて全くなかったから、着替えを持って来ていない。一回家に帰って制服を、その前にシャワーを浴びて、それから、それから、

「ほら、絶対でかくなったよな。前は手に収まったけど、今はちょっと余るし」
「…おかげさまで」

頭の中で必至に時間の逆算をしている間も、晴矢の頭の中はまだわたしの胸のことでいっぱいらしい。そのまま肩、背中、と意図を持った手付きで身体の線を確かめるようにじっとりと撫でられ、瞼に唇を落とされれば思わず目をぎゅっと潰る。晴矢はいちにいさん、と、何かを数えているところだった。これは後になって、肌に散った跡を数えていたのだとわかった。

「晴矢、わたしはもう着替えたいのだが」
「えぇー。あ、じゃあさ、シャツのボタン三つくらい開けて着てみせてくれよ!」
「なんていうか、君は本当にデリカシーがないな」
「あ。それ前の彼女にも言われた」


あんな男のどこがいいのだと、そう言った友人の顔が浮かぶ。その時わたしが言った言葉を、彼女は一生理解出来ないとも言っていた。
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