視界が霞むのはお前のせいじゃない


例えば俺が何かしらの事故やら病気やらで死に掛けたとしよう。

まぁ一命は取り止めたとして、それでも一回死に掛けたわけだから、手や足なんてくっついてるかわからないしもしかしたら目が見えなくなるかも知れないし耳が聞こえなくなるのかもしれないだろう。この世界で生きているのだからそんなことわかりきってたことだしそんな可能性は毎日すぐ後ろにあるわけだしな。例えばなんて言ってられないんだよ実際。だからおまえはまだこれからだというのに俺というやっかいなお荷物を一生背負わされてしまうことになるんだぞ?まだこれからなのに。あれ、今二回言った?まぁいいやともかくわざわざ苦労する為にそんな言葉使うことすら間違ってると思うんだよ。でもそれも未来がないって言ってるみたいでちょっと寂しいなだなんてそんなことわかっててこの世界にいるんだからそう考えることが間違っているよななんて、そういえば前にもこんな話したよな確かあれは…何年前の冬だったか。あの日俺はわんわん泣きながら我が儘言っておまえを困らせたっけ。今思い出すと恥ずかしくて死ねるな。
よく考えれば俺はひとに迷惑ばっかかけて生きてきた。柄じゃないって?ほっとけ。でもな、迷惑をかける方も中々辛いものがあるんだ。なんて、変だなおかしいな。あぁ話が逸れたけど俺が言いたいのはつまりもっと自分を大事にした方がいいぞみたいなよくわからないけど多分そういうこと。

「わかったか?」
「すまん。後半はあまり聞いていなかった」
「ふざけんなおまえ、もう一回言わせる気か」

おまえには何かを創り出す為の手も自分で歩く足もちゃんと残ってるじゃないかなんて恐ろしくて残酷なことを言うんだな。おまえは。
例えば話だって言ってるのに。馬鹿だなって合わせて笑えよ。これだったら俺が一生傍に居るとか俺がおまえの目になってやるとか散々くさい台詞聞かされる方がまだよかったのに。そんな泣き声で生きててよかったなんて言わないで(ああもうやだなもう光も拾えない飾り物の目からも涙は出るんだから。人間は不思議だ)


「佐久間、泣くな」



声が残っていてよかった。だってげんだって名前を呼ぶことはまだ出来るだろ。



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