おお振り(短編) | ナノ








「おい」


「ねえ、ゆうちゃんゆうちゃん!」
「ん、なにー?」


話しかける俺を無視して、
きらきらした目線を田島に
向けるコイツ。

今に始まったことじゃねえ
から慣れたっつーか、ムカつく
っつーか。
本当に田島が好きなんだなとか
思う。ま、認めたくねーんだけど。


「こら」


二度目も無視され、流石に
イラっとくる。田島と楽しそう
に話しやがって…。ムカつく。
本当、かわいくねー。


「今日は屋上でお昼食べよ!」
「おお!いいよ」

「無視すんなバカ!」


バカ。に反応するこいつは
怒って俺に近づいてくる。
まともに喋れるのは怒った
時くらいだ。
怒らせるしか出来ない俺も
相当バカだけどな。


「バカですって?!孝介のがバカよバーカ」
「…んだと。ほんっとー!可愛くねー!!」


可愛くなくて結構!とプンスカ怒る
幼馴染みはべーっと舌を出すと、田島
の元へ戻った。


「田島より俺のが長く一緒にいるのに
何でだよ」


だーあああっっもう!!

俺はアイツを見て頭をぐしゃぐしゃ
にして机に伏せた。

頭に浮かぶのはいつも幼馴染みの
アイツの笑顔で。でもアイツは田島が
好きで…。

いっそのことこの思い打ち明けてしま
おうと何度思ったことか。
きっと、告えば今の関係は壊れるに
決まってる。だったらこのままがいい
と思った。


そう、田島にだけしか見せないアイツ
の笑顔を俺のものにできなくたって。



その笑顔


(遠くから見ているだけでいい。)
(可愛い顔が見れるなら)

20111113.








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