02
岩室を飛び出した。
綺麗に均されていた岩の床が刳れる。爪が無我夢中で岩肌を捉える。風が体を切っていく――否、体が風を切っていく。一つ一つと地を蹴るごとに、消えるように前進する。音速で流れる景色はぐんぐんと高度を上げていった。
一瞬にして辿り着いたそこは、彼女の縄張り。その頂点。見下ろす景色は茶色の岩肌、その間に走る灰色――サイクリングロード、その下に広がる一面の緑。
いつもと変わらぬ風景、己が故郷、見知った住み処。
それなのに。
同じなのに違う。変わりない世界がそこにあるのに、そこにいる、自分が。
遣り所のない混乱が、憤懣(ふんまん)が、身体の内から湧き起こる。
「ヴォォォオオッ!!」
どうなってるの!!
叫んだ言葉は、カブリアスのそれだった。
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110726
はじまった異変
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