Gradualmente.









聖杯の幹部である幼なじみとの巡回を終えた少女は
嵐の中で
暴雨と強風により冷え切った体を、胸の前でクロスさせた腕で抱きしめる



そして、そんな様子を

碧い瞳は
しっかりと捕らえていた……























「今日のお前は、気が散っている。そんな状況のお前を連れて歩くのは…」






さっきから自分の後ろを、ただついて歩くだけの
上の空の少女に向けての言葉だった












「……聞いているか?」

「……」

「オイ、フェリチータ!」







何度も呼ばれているにもかかわらず

余程ぼんやりしているようで、その少女に反応は無かった



だが、
ノヴァが自分の名を呼んだことで
ハッと、周りに気を巡らせて辺りを見渡したフェリチータ










「ノ、ノヴァ…どうしたの、大声だして」

「……はあ。」







ノヴァが、心底面倒だと言わんばかりの
大きなため息を吐いてみせた。


ノヴァ自身、これは自然にこぼれたため息なのだが

フェリチータにとっては、それが物凄くバカにされたように感じたらしい






「ノヴァ、それは一体何のため息……」







抗議の言葉を浴びせてやろうとしたのだが…

やはり、自分は全体的に鈍くなってしまったらしい



いま自分達の目の前に広がる光景、もとい
もう随分と見れたファミリーの屋敷

そして
少し怪訝そうに眉を顰めた彼を
漸く目にする





(……あぁ、もう着いたんだ)

(今日は、なんたが早かった気がする…)












「ほら、早く入れ。」






そんなことを、ぼんやりと心に呟いて
促されるままに屋敷へと足を踏み入れた。










「…あ、」

「……どうした」







今度は心配しているのか、普段とは反対に位置している
綺麗に整えられた眉を見た






「……ううん、何でもないの」






フェリチータが入れるように、扉を押さえ続けていた右手と右足を辿る…

最終的に、ノヴァの濡れた片肩が目に入った









ノヴァだけではない…

いきなりの嵐で雨が酷くなってくる中
寒さに震えている彼女の為に
ルカはきっとお風呂にお湯をはってくれているだろう…







「ノヴァ………あのね、」

「………」







ノヴァは、静かに彼女をみて
ただ彼女の言葉を待つ───…


目にはいるのは、翡翠の彼女の瞳と
赤く長い髪…

そして、片隅に掠めたのは
まだ見たことのない、“例の赤い髪の少女”だった。






その長い髪から、ポタポタと水滴が滴り落ち
玄関の床に模様を描く








「アルカナ能力は…」

「アルカナ…」

「違う……、タロッコに選ばれた私たち宿主は…」







このファミリーにいる人間たちは…

神秘の力を
その身に宿す者たちは…









「アルカナファミリアを、去ることは……可能なの?」

「……」








フェリチータの言葉は、ノヴァにとっては予想外のものだ

そして、どういう考えをもって
その疑問へとたどり着いたのかも、計り知れない…





だが、何の手がかりも情報もないなかで













「…フェル、場所を変えよう」
















ただ言えることは、






















(あいつの考えとはきっと、)

(僕と、一致しているのだろう。)











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