Infatti, discordanza







「おっ嬢ー!」

「フェル、戻ったと聞いた」

「ノヴァ…リベルタ、」










フェリチータが屋敷に戻った

そう知らせを聞いた二人は
ロビーにいる彼女の元を訪ねてきたのだった


声をかけられ、フェリチータは一度ビクッと
肩を揺らし

ゆっくりと後ろを振り返った









「フェル、お手柄だったな」

「…─うん」










連続誘拐犯を捕まえたのだ
ノヴァからも、賞賛の声をもらったフェリチータ

だが、どこか歯切れが悪い








「どうしたんだよお嬢!」

「リベルタ…」







ソファーに座るフェリチータに
リベルタが後ろから声をかける





「……少し、気になることがあって…」

「気になること?」






言ってもいいのか
でも、もし彼らに言えば

あの子にファミリーの目が向いてしまわないだろうか






「…うん」











でも、本当にあの子に
アルカナ能力が備わっているのなら

このファミリーを、脅かすような出来事が
起きてしまったとき…





ファミリーのみんなは
あの赤い髪の少女を捕縛対象にするかもしれない

アルカナ能力があるというだけで
このファミリーに縛られることになるかもしれない







「……あのね、実は」







フェリチータが、ノヴァとリベルタに
話そうとした

その時──




















「お嬢様ァー!」






ロビーの扉が
勢いよく、開かれた


かと、思えば

ひとり青年が血相を変えて
中に入ってきて、フェリチータを見つけると
彼女に向かっていく







「ルカ、どうしたの、そんなに急いで…」






肩をいきなり掴まれたフェルは
その力強さに少し眉をよせた







「どうしたもこうしたも!」






ルカの瞳には、なにか煌びやかなものが溢れ出している

フェリチータは、彼にスカーフを手渡した







「私が、私が研究のためだけにっ
あのジジィへの変な対抗心で
お、お嬢様をお買い物に行かせたばっかりにっ…」

「ルカ、お買い物くらいで大げさな…」






フェリチータは、つかみかかるような彼の
勢いにたじろいだ。







「おい、ルカ…お嬢が困ってるだろー?」

「は、放して下さいリベルタっ……私は、お嬢様に聞きたいことがまだっ
山ほど…、あるんですからっ…」







リベルタがルカを抑え
ノヴァが、彼女の手を取り助け起こす






「ありがとう、ノヴァ」

「!……礼を、言われるほどではない」





フェリチータの言葉に
ノヴァの表情が少し柔らかくなる

真面目な彼を、こんな顔にさせるのは
彼女くらいだろう







「落ち着けルカ、ほら、聞きたいこと山ほどあるんだろ?」

「…あぁ、はい…そうですね。………フェリチータお嬢様」






フェリチータの向かいのソファーに
ルカが腰を下ろす







「…まず、お怪我はありませんか?」

「えっ、……ううん、どこも怪我なんてしてないよ」

「嘘おっしゃらないで下さいっ!」

「う、嘘?」

「いくらレガーロ男といえど、所詮は飢えた野獣に代わりありません。
……どこですか?」

「ど、どこ…?」







ルカが間にあるテーブルに手をつき
身を乗り出す

そんな彼の隣にしゃがみ込んだのはリベルタ

ノヴァはフェルの座るソファーの端に腕を組んで凭れ、終始呆れ顔








「嘘おっしゃい!連れ去られそうになったのでしょう!?
いったい、あの男共にどこを触られたのですかっ…」

「ルカ、やめろ。いつまで経っても話が進めない」






ノヴァの尤もな意見に
ルカも渋々腰を下ろした






「ルカのあんな顔、久々だなぁ!
アルカナデュエロ以来だな!」






リベルタが、驚きすぎて固まっているフェリチータの隣に腰を下ろす

彼はフェルに、彼女が席を外していたときの
ファミリーの状況を説明する







「状況は、よくわかった。」







でも…、と
フェリチータななにか考え込むように

手を自分の顎に添えた






「ルカ…私が連れ去られそうになったって、どういうこと?」

「どういうことって、…実際そうなんだろ?」

「あぁ、それでもどうにかして一人持ちこたえたのではないのか?」

「ち、ちょっとまって…」







なにか、矛盾している
フェリチータが彼らに尋ねる







「会議が終わって解散した後、諜報部の奴が部屋に飛び込んできてさ」

「あぁ。その者が言うには
街にあの連続誘拐犯が現れ、また騒ぎを起こしている」

「赤い髪の女性が、いままさに連れ去られそうな状況だと…言ったんだ」

「…………」








赤い髪の女性

それを聞いて、フェリチータの頭には
一人しか思い浮かばなかった



きっと、リベルタ達が
その赤い髪の女性…

フェリチータが目撃した女性を、自分達のお嬢様だと勘違いをしたのだ









「ルカ…リベルタ、ノヴァ…………
それ、私のことじゃないよ」













三人が、一斉にフェルを見つめる






「フェル…?」

「私一人で、あの人たちを捕まえたわけじゃ、ないの…」












明らかに、何かが食い違っていることがある
そしていま彼らの話しを聞いて

ようやく、それがハッキリとした。









「みんなを、集めて」


















少女の力強い声と

真剣な表情に




そこにいたルカたちは
ただ

頷いてみせた。













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