指フェラ



次の日から休みに入る、誰もが浮かれる金曜日。
明日が休みだからと、仕事終わりに飲みに行く社会人も多い。
そして、早く起きる必要がないからと、ストレス発散のように飲む人も、非常に多い。
しかし、情報屋なんて仕事をしている身としては、そんな物関係ない。
休みは不定期であるし、金曜日なんて楽しみでもなんでもない。
が、今日の取引相手はそうではなかった。
一般企業と同じく、土日、祝日が休みの相手。
そんな相手と夕方ごろから合流し、依頼されていた情報を渡してさようなら、するはずだったのに。
金曜日に浮かれている一人である彼に、無理矢理連れて行かれた酒飲み場で、アルコールを沢山流し込まれた。
酒を入れて、他にも情報を得られないか、など愚かな考えでもあったのだろうが、こちらも長年情報屋をやっているのだ。
そんな簡単に情報を零したりなどしないし、そもそも俺は酒には強い。
今日は早く帰れると思って、家に客を呼んであるというのに、状況的に連絡も入れる事が出来ないし、イライラは募るばかり。
適当に嘘の情報をポロリ零して、それでも解放されたのは深夜だった。
あのオヤジはその内、デマの情報で痛い目に合うだろう、ざまぁみろ。


「ただいま」
自分の家へと戻り、玄関から客人へと声を掛ける。
温かい家庭で育った彼は、いつも「おかえり」と返事をしてくれると言うのに、どうした事か今日は何も反応がない。
はて、とリビングの扉を開けば、そこはしん、と静まり返っていた。
俺を待っている間に飲んでいたのであろうココアは、冷めきったままカップに少し残っている。
そのカップが置いてあるテーブルの前、大きなソファに、彼はいた。
すぅすぅ寝息を立てているが、いつからいてくれたのだろう。

「旦那様が帰ったよ。おねむなの?シズちゃーん」

するり、金髪に指を通すと、眠って体温が高くなっているのか少し湿っている。
少し癖のある髪は、染めて痛んでいるものの、ふわふわしていて触り心地が良い。
この髪を弄ったり、撫でたりするのが、俺は好きなのだ。
そして、撫でられる事に慣れていない彼も、俺のこの行動は好きなようで、口には出さないが「もっと」と頭をすり寄せてくるのだから可愛い。

「シズちゃん、俺、暇なんだけどー。疲れてるんだけどー。癒してほしいんだけどー」

ぼそぼそ、しっかり小さい声でしゃべっている俺も、随分良い人へと、成り下がったものだ。
昔なら叩き起こしていただろうが、それが出来ないのは、彼を傍に置きすぎたからなのかもしれない。
それに少しの苛立ちを覚え、小さく舌打ちをする。
と、シズちゃんの口が、もそり、動いた。
短く呻いたけれど、そのまま眠りは続行するらしい。
意外と長い睫毛を持つ瞼は、未だに開かれない。
先程動いた口は、少し緩んで、唇の端が濡れてきた。
子供っぽいな、と人差し指でそれを拭ってやってから、俺は口の端を持ち上げた。
悪戯を思いついた時にするこの顔を、今助手が見たなら「気持ち悪い顔しないでちょうだい」なんて言うだろうし、シズちゃんが起きていれば「何企んでんだ、気持ち悪い顔すんな」なんて言うだろう。
どっちも眉目秀麗に向かって「気持ち悪い顔」を連呼するんだから、失礼な話しだ。
そんな失礼である一人の口に、ずぼり、右人差し指を突っ込んだ。
突然の異物混入に、眉間の皺が強くなるが、それでも起きない。
少し擽る様に舌を撫でてやると、もぐもぐ軽く食んだあと、ちゅうちゅうと吸ってきた。
それが赤子の様で、胸の辺りがきゅんとする。

「あはっ、無意識?シズちゃん、かっわいー」

唇ではむはむと柔らかく指を揉みながら、指先を吸われる。
温かい舌に舐められながらの行為に、ぞくりと背筋に快感が走る。
そのまま調子に乗って、彼が好きな上顎を撫でてやると、「んっ」と鼻から抜ける、甘い声が聞こえた。
反応が返ってきた事に浮かれて、ふにふに舌を突いてやると、更に眉間に皺が寄った。
意識のない彼を弄るのも、なかなかに楽しい。
しかし、寝ている彼のこれでは、指フェラと言うには幼稚すぎるので、代わりに俺が指フェラしてあげようじゃないか。
と意味の分からない事を頭の隅で考えて、俺もシズちゃんの指を、パクリ咥えた。
指先をちゅう、と吸って、入る所まで入れると、舌全体で舐め上げる。
ずるり吸い付きながら引き抜いて、指先を舌で撫でると、くすぐったいのかピクリと跳ねた。
もう一度パクリ咥え、唾液を絡ませて出し入れしてやれば、じゅるる、と下品な音が部屋に響く。
その間に俺の指は、二本に増えてシズちゃんの口の中を遊んでいる。
舌を摘まんだり、かき混ぜてやると唸り声が聞こえてくるのが楽しい。
好き勝手やっていれば、流石に違和感から逃れなくなったのだろう。
シズちゃんがむずむずと瞼を震わせている。
起きるまで、もう時間は掛からないだろう。

「ん、…んむ…」
「シズちゃん?」
「む…?いじゃぁ…、……あ?」
「おはよ、シズちゃん」
「にゃに、して…」
「指フェラ。見て、シズちゃんの指も、俺の指も、べったべた」

ちゅるり、厭らしい音を立てながら、シズちゃんの指に吸い付いて、咥内から引き抜く。
それを見せつける様に目の前に差し出せば、混乱の表情が強くなる。
寝ぼけ頭で、今の状況が飲み込めていないらしい。
そんな彼の咥内で、指を動かせば、グジュリ水音が響いて、ぽたり、滴が零れた。
あぁ、勿体ない、なんて思うけれど、今は彼を苛めるのに専念しよう。
俺を放置したシズちゃんが悪いよ、待たせたのは俺かもしれないけど、俺悪くない。

「さぁ、シズちゃん。可愛く指フェラ、できるよね?」



―――

指フェラってなんだっけ。
さきっちょさんへ、お礼イザシズ。








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