ハンカチと手錠と


※注意:臨也が挿入される側の表現があります。あくまでイザシズですが、苦手な方は観覧しないことをお勧めします。それでも良い方はどうぞ。




仕事終わりの夜、のこのこ目の前に現れた臨也に向かって、目に入った看板を投げつけた。
それを「あぶないなぁ、もー」など言いながら、ひょいとかわす姿を見て、怒りのメーターが上がった俺は、これまた近くにあった標識を引っこ抜く。
がごん、と大きな音が、夜の空気に響いた。


「手前、わざわざ俺の前に現れるって事は、殺されたい、って事だよなぁ?あぁ?」
「殺されたい訳ないだろう?相変わらず馬鹿だなぁ」
「よし、殺す。今すぐ殺す」
「あははは、やってみればー?」


いつものように、読めない笑顔で言葉を発する臨也は、どこか楽しそうだ。
会う前に良い事でもあったのかもしれない。
そう考えると、更にイライラする。
そんな俺を挑発するように、ひょいひょい走り出した臨也を、いつものように追い掛けた。
標識を握ったままで少し走り辛いが、気にしていられない。
その標識を、当たる距離でスイングすると、前を向いていた臨也はチラリとこちらを見てから、器用に飛び跳ねる。
ぴょい、と避けると、そのままスピードを上げて路地裏へ入っていった。


「ぴょんぴょん、ぴょんぴょんと…くそうぜぇノミ蟲があぁぁぁ!」


あはははは、角の向こうから、笑い声が聞こえる。
急ブレーキをかけながら右折すると、そこには黒い姿がなかった。
それでも、気配は感じる。
臨也お得意の、なんちゃらとか言う動きで、上にでも逃げたか。
キョロキョロと左右、上を見ながら足を進める。
ビルとビルの間のそこは、薄暗く狭い。
標識はここだと邪魔になると判断して、入り口に置いてきたが、正解だったかもしれない。
細いこの道では、振り回す前に引っ掛かってしまう。



「シーズちゃんっ」
「いざっ…、ぐぅっ?!」


背後、耳元で声がしたと思ったら、何か湿っぽい布で口と鼻を押さえ付けられた。
すぅ、と酸素と共に入ってきた物が何かは分からないが、危険だと本能が告げる。
息を止めてみたが、無駄だったようで、ぐにゃりと視界は歪んだ。
無理矢理繋いだ意識で、首を動かしたら、そこには笑顔の臨也。
楽しそうに笑う臨也は、楽しそうな声で、
「おやすみ、シズちゃん。またあとでねっ」
と言った。
あぁ、後なんてないくせに、遂に俺を殺すのか、卑怯な手使いやがって。
そう口の中で呟いて、俺は黒い世界へ引きずり込まれた。






―――


「…ぁ……?」


ぱちり。
急に意識が浮上して、目を開けた。
今まで意識がなかったはずなのに、不思議と頭はすっきりしている。
寝起きのようなぼぅ、とした感覚はない。

ここは何処だろうか。
白い天井、壁、大きなベッド。
ついでのように置かれた小さな棚、机と椅子。
どれも見覚えはまったくなかった。
それでも微かに香るこの匂いは、臨也の物だろう。
香水と、俺が感知できる独特な匂いと感覚。
そんな風にすぐ分かってしまうのが嫌で、思わず溜め息が出る。

それよりも、問題なのは今俺が置かれている状況だ。
ベッドの上で、寝転がっているのは、特に問題ない。
服も普通に着ている。
ただ、腕が動かせない。
ちらりと上を見た所、どうやら手錠を掛けられているらしい。
それがベッドの上で固定されていて、がしゃり、と音を立てるだけで、ほんの僅かにしか動かない。
忌々しいそれを壊そうと力を込めてみた。
力を込めたのに、可笑しな事に、それはぎしりと音を立てただけだった。
この手錠が特殊な物なのか、俺の体に異変があるのか、はたまた両方か。
嫌いな筈の力に頼ってきた俺は、それが使えない事に落胆する。



「あぁ、起きたんだ」


がちゃり、鍵と扉の開く音。
ひょいと姿を現したのは、予想通り臨也だった。
かちゃんとまた鍵らしき音を立てた後、にこやかに此方へ向かってくる。
相変わらず腹の内が読めない表情をしている。


「手前、何のつもりだ」
「え?シズちゃんを誘拐、かな」
「ふざけんな!変な薬みたいなの使いやがって!卑怯な事してんじゃねぇ!」
「化け物みたいな怪力持ってるシズちゃんの方が卑怯だよ。でも睡眠剤は効いたんだね。まぁ普通のより何倍も強いけど!ちなみに怪しいお薬で、ちょっとだけシズちゃんの力を抑えてみたよ!手錠が壊れてないのを見ると、こっちも効いてるみたいだね。手錠も特別発注、頑丈なのを買ったんだけど、良かったよ。あ、この部屋ね、これだけの為に借りたんだよ、池袋に。俺ってば張り切りすぎかなー」


べらべら、べらべら。
一人勝手に話していく臨也。
一気に色々言われて、頭が混乱する。
何のために、こんな事。
殺したいなら、さっさと殺せばいいのに。
薬が効くと分かったなら、毒でも使えば良かった。
意識がない間に、窒息させれば良かった。
頭を銃で撃てば良かった。
死ぬのは嫌だから、どれも実行されていなくて良かったけど、コイツが何をしたいのかさっぱり分からない。

グルグル頭で色んな事を巡らせていると、臨也はとたとたと俺に近付いてきた。
素足なのだろう、フローリングとの間でペタペタと音がしている。
とうとうベッドの側まできて、ピタリ止まると、男はにこり、柔らかく笑った。
ぞくりと悪寒が走って、何か分からないが危ない、と脳が訴えてくる。
とっさに何か言おうと口を開けた途端、ビッ、と裂ける音と、カツン、とフローリングに物が当たった音が響いた。
俺の服が臨也のナイフで裂かれて、千切れたボタンが転がった音らしい。


「手前…、何のつもりだ」
「シズちゃーん、それ二回目だよ」
「うるせぇ!…なっ、何してんだ!」
「下の服を脱がそうとしてるんだよ。下は裂かないで脱がしてあげる。俺が興奮するから」


予めベルトは抜かれていたらしい。
あっさりとズボン、下着を抜き取られて呆然とするしかない。
丸見えになった下半身に、顔が熱くなる。
カァ、と顔全体が赤くなるのが分かった。



「シズちゃんは童貞だよね」
「なっ…!今そんなの、どうでもいいだろ!」
「どうでもよくないよ。彼女いた事もないし。俺がシズちゃんの初めて、両方貰ってあげるね」


両方って何だ、そう言おうとした俺の陰茎を、ギュッと握る臨也。
ゆるゆると強弱をつけて擦られれば、すぐに熱を持ち始めた。
初めて他人から与えられた刺激はデカくて、やめろと必死に首を振る。
あの臨也にそんな所を触られるだなんて。
屈辱でしかない。


「あははは、おっきくなった」
「や、め…」
「もっと気持ち良くしてあげるよ」
「な、に…?」
「シズちゃんの童貞、貰ってあげる、って言ってんの。準備はしてきてあるから、安心してよ」
「な、なっ!」


俺の腰辺りに膝立ちで跨った臨也は、俺のぺニスの根元を握ると、そのま腰を落とした。
温かく、窮屈なそれに包まれた俺のそこは、どくんと大きく脈を打つ。
初めて何かに包まれた快感は、すぐに俺を飲み込んだ。


「っぁ、はぁ、あ」
「あはっ、シズちゃんのおっきー」
「や、めっ、あぁ、ぅや」
「ふはっ、はぁ、突っ込んでるのに、ねっ、喘いじゃうシズちゃん、可愛いよ。あっ」
「やめっ、ぅあ」
「止めたらシズちゃんイけないでしょー?」
「ふぅっ…?!ぁっ、そこっ、触るなばかっ!!」


腰を上下に動かしながら、臨也は器用に俺の乳首へと手を伸ばした。
厭らしく動く指は、様々な触り方をしてきて、それにいちいち体が跳ねた。
快感に追い込まれて、やけに感じているように思う。

知らない、知らない。
こんな自分は知らない。
乳首を触られて、こんな風に乱れる自分は知らない。
ぺニスを誰かの中に入れて、こんな声が出てしまう自分は知らない。



「ぅ、ぁっ、いざやっ、も…」
「早いなぁ。イきそう?」
「うっ、ぅ…」
「そう」


ぐちぐちと鳴る水音と激しい動きに、絶頂が近付く。
それを訴えれば、頷いた臨也は、腰を上げて俺の物をずるりと抜いた。
温かい物が離れて、徐々に外気へ触れる感覚に、ブルリと体が震えた。


「俺ネコじゃないからさぁ。中出しは嫌なんだよね。あぁ、イかせてはあげるよ」
「っあ、なにっ」
「棒合わせ。俺もイってないもの。はぁ、シズちゃんの、あっつ」


体勢はあまり変わらないまま、臨也の手に俺のと、臨也のが握り込まれる。
高まった熱は、数回手が動いただけで、あっさり放出された。
臨也とのタイミングは合わなかったようで、出ている間も擦られているから堪らない。
あ、あ、と意味の無い言葉が、自分の口から何度も漏れた。



「はぁ、ぁ…。ん、気持ち良かったよ、シズちゃん」
「し、ね…っ!」
「何ぐったりしてるの?これからが本番だよ?」
「…は?っ、つめて?!」
「今から後ろの処女も貰ってあげるから、ね?」
「?!」


尻の穴付近に、ドロリと垂らされた冷たい物。
今の臨也の言葉。
つん、と今から使うであろう場所を指でつつかれ、サァと血の気が引いた。


「やっ、やだ!止めろ馬鹿!」
「はいはい。すぐ気持ち良くさせてあげるから。まぁ、初めてだから?快感を拾うにはすっごく時間がかかるかもね!今回は違和感だけかもしれない」
「うっぁっ」


ペラペラ喋りながら、ぐぷ、と入れられた指は細い。
それでも、そこに何かが入るだなんて、今まで経験したこともなくて、違和感と痛みに泣きそうだった。
そんな俺の表情が面白かったのだろう。
あはは、と心底楽しそうに笑って、ローションをまた垂らしてから、指の動きを激しくしてきた。
ローションと空気が泡を立てて、音も立てる。
聞き慣れないそれが、下品で、卑猥で、耳を塞ぎたい。
でもそれが、臨也の甘い息遣いと声と共に、頭に響いて、更に脳を痺れさせる。


「シズちゃん、素質あるのかな。もう指二本だよ。もうすぐ三本目いけるかも」
「ぅ、ぐぁ…、はぁ、はっ」
「ふふっ、良いねぇ、その声!苦しい?痛い?」
「殺す、ころす…!」
「喘ぎ混じりにそんな事言われても、ねぇ?俺が興奮するだけだよ。ほーら、ローションと指追加ー」
「っああぁ…!ふぐぅっ」


うるさい煩い五月蝿い。
音を立てるな。
呼吸を乱すな。
声を出すな。
全部全部、耳から入って脳が振動する、止めてくれ。
脳までぐちゃぐちゃに、なってしまいそうだ。
未知の感覚が、考えが、恐ろしくてしょうがない。
体がガクガク震えるのは、その恐怖からだろう。
こんな、こんな弱い姿、この男には見せたくなかったのに。



「ひっ、ああ…、ひっ!」
「あ。前立腺みっけ。シズちゃん、自分の体がびっくってしたの分かる?感じてるんだよ」
「ちが、違う…、いやだっ!っあ」
「あぁ、シズちゃん可愛い、可愛いよ。困ったなぁ…。もうちょっと解してあげるつもりだったんだけど」
「ひぅ、…っ?!、くそ、止めろ、止めろよ…!」
「もう我慢、出来ないや」
「ぐっ…、あああああぁ…!」


くちゅ、と音を立てて抜かれた指。
そこに熱いものが擦り寄せられたのは、すぐだった。
荒くなった臨也の息と、表情。
それに息を呑んで、静止を掛けるも、全く無意味だった。
そりゃそうだ。
元々、臨也が俺の言葉なんて、聞いてくれるはずかない。

みしみし。
そんな音がしそうなくらい、穴が広がり悲鳴を上げている。
臨也の言葉を聞けば、どうやら血は出ていないらしい。
ローションのおかげなんだろうが、血が出ていなくても、痛いものは痛い。
痛みに強いはずの体。
傷付けられていない場所は、痛み強くないのだろうか。
それとも元々、こういう場所は強くならないのだろうか。
あぁ、もう、そんなのはどうでもいい。
コイツの動きを、誰か止めてくれ。


「あ、ひっ、ひぃっ、あぁ…」
「シズ、ちゃん…息吸って、…吐いて」
「はっ、ふっ、はぁ…はぁ」
「そう、上手。そのまま呼吸はしててね。出来るだけ力抜いて。俺の千切れそうだから」
「千切れ、ちまえ、…っひぁぁ、そこ止めろって、あっ」
「んんっ…、はぁ、中どろどろ」


ずくずくと、先程腰が跳ねた場所を、何度も刺激される。
ゆっくり、大きく出し入れされて、入って来た時奥のポイントを強く刺激される。
それにぞわぞわした感覚を覚えていたら、今度は深く挿入したまま、ごりごり奥を刺激された。
さっきまでのゆっくりした痺れと違い、絶え間なく来る何かに、ビクビクと体が跳ねた。
様々な動きに変わるそれに、よくそんなに器用に腰が動くもんだと、少し感心してしまった。


「あっあっあっ、ぅぁっ」
「はぁ、はっ…すご、腰がすごい跳ねてる。気持ち良い?」
「わ、分かんね、…ひぎっ、ふぁ」
「あれ、腰回されるの好き?」
「ひ、ひぁ、あ…んんっ」
「ひんひん、あんあん、可愛いねぇ。耐えるような低い声も、すごく、そそるよ」
「だ、まれ…!ノミ蟲ぃいい!」
「あっはっはっ、いつも地を這う声が、今は高い!面白い!俺が、俺が出させてる!」


相変わらず器用に動く腰は、ぐるり円をかいてみたり、深く深く突き刺してきたり、俺にくる衝撃が変則すぎて変な声が、変な風に出る。
唇を噛み締めても、自分の唾液で滑って意味がないし、まだ手は使えないし。
勝手に出てくる、いつもより少し高い、気持ち悪い声はそのままにするしかなかった。
そんな気持ち悪い声に可愛いだなんて、馬鹿にするのも大概にしろ、と言ってやりたかった。
言ってやりたかったのに。
どうしてそんな、嬉しそうな顔して言うんだ。
そんな顔は、反則だ。



「や、ば…、俺、先イっちゃう。…まぁ、シズちゃん初めてでトコロテンは無理だし、しょうがないよね、うん」
「な、に…、っあ」
「ちょっと、自分勝手に、動くよ、っは…」
「い、や、っぐぅぅ、っあああ、」


耳元で、ポツリ囁かれた言葉に、余裕はなかった。
その色気をたっぷり含んだ声に脳が痺れて、顔を熱くさせていると、途端激しくなる動き。
荒々しいそれに、俺の脳と体は付いていけない。
無意識に首を振って、どうにか追い詰められる感覚を逃がすのに、必死だった。


「可愛い、可愛いシズちゃん。その顔、良いっ」
「はっ、はぁ、ぁ、あ…はぁっ」
「ぁっ…!イ、くっ、んぅっ」
「あ、つっ、手前…!ひっ」
「は、ははっ、中出し。しちゃった。後から掻き出してあげるから、大丈夫」
「し、ね!」


じわ、と熱い物が、中に広がる。
それを擦り込むように腰を数回振られて、また腰と足が跳ねた。
こぷ、と臨也の物が抜かれた穴からは、ドロリと何かが垂れる感覚。
ローションと精液が流れ出たのだろう、気持ち悪い。
それを見て厭らしいね、興奮する、だなんて言った臨也の感性を疑う。



「さて。トコロテン出来なかったシズちゃん。どうやってイかせてほしい?」
「……」
「おや、黙りかい?まぁいいや。これ、もうイきそうなんでしょ?パンパン」
「っ?!やめ、それは、嫌だ…!」
「何で?気持ち良いでしょう?」
「あっ、あっ、無理、ぁ、っー!」


グリグリと、亀頭部分を親指と人差し指で力強くこねられる。
じわじわ追い詰められていたそこは、それだけで簡単に上り詰め、びゅるりと、白濁を零した。
全部出るよう、下から上へとにゅるにゅる搾り出され、また小さく声が喉から出た。


脱力感が酷い。
息が荒い。
体が顔が熱い。
頭が動く事をしない。

もう何も考えず、寝てしまいたい。



「これからゆっくり、ゆっくり、慣らしてあげる。乳首も、アナルも」

俺の上で、そう笑った臨也も、汗が滴っている。
コイツも、汗をかくのか。

「俺なしじゃ、いられない体に、してあげる。何日も、掛けてね」

俺の髪を撫でる手は、見たことない程、優しい。
こんな風に、触る事も出来る男だったのか。

「早く、早く、俺の所へ、堕ちておいでよ。大好きなシズちゃん」

あぁ、その大好きって言葉が、もしも偽りでないのなら。
こんな変な事せず、さっさと真っ正面から言えってんだ、この、


「クソノミ蟲」


­―――

臨也に前も後ろも初めてを奪われてしまう静雄萌え。どっちも初めてが欲しいとか欲張りな臨也萌え。でも静雄はネコです☆







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