ロリータファッション


※臨也も静雄も女装してます。静雄の女装がエグいです。



その日、臨也と静雄はいつもの様に派手な鬼ごっこをしていた。
危険を察知したものはさっさとその場を離れていったし、ダラーズでは早々に情報が回ったようで、情報を得た者からその関係者へと更に回り、近寄る者はいない。


はずだった。
情報が回っている事を経験上知っている臨也は特に、油断していた。

「きゃっ…!」

投げられたナイフを弾き飛ばした先に、女性がいるなんて、気付かなかったのだ。
小さく上がった悲鳴を耳に入れ、ピタリ二人の動きが止まる。
がばり、そちらに首を向ければ、尻餅を着いた女性と、その女性の側にしゃがみこむ男性。
二人にとって顔見知りの男女だった。


「狩沢さんっ、ほっぺから血が出てるっすよ!」
「えっ?!やだぁ〜女の子なのにぃ〜。ゆまっち回復魔法お願い」
「無理っすよ、俺は炎系の魔法っすから」


静雄にとっては、いつも呪文を並べているようにしか聞こえない、狩沢と、遊馬崎だ。
女性の顔に傷を付けた事に、さぁと顔を青くして、すぐに駆け寄ったのは静雄だった。
ポケットから素早く絆創膏を取り出すと、そぉ、っと貼り付ける。
それに「やだ、シズちゃん優しい!」とはしゃいだ狩沢は、見たところ元気だ。
それを見ながらのんびり近付いてきた臨也は、特に何も気にしていないようである。
それに静雄はムッとする。
全て静雄が悪いと、その態度と表情が言っていたからだ。


「やぁ。いつもドタチンといる、狩沢さんと、遊馬崎君、だったかな?」
「そうだよ。流石、イザイザだね!」
「…それ俺の事?」
「臨也さん怒ってるっすよ!」
「ノミ蟲の呼び方なんざどうでもいい。…悪いな。女なのに、顔に傷付けちまった…」
「大丈夫だよ、…って言いたいけど。私今度、コスイベントあるんだよね。それに不参加はちょっと辛いなぁ」


眉を下げて謝る静雄に、狩沢は明るく接する。
が、楽しみにしていた行事に行けなくなる事を聞き、静雄の顔は更に曇った。
女性の顔に傷を付け事による罪悪感が大きくのしかかっている所に、さらに追い打ち。
同窓の連れという事もあり、気まずい感じと、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


「す、すまねぇ…。何か…詫びる。何でも言ってくれ」
「ホント?本当?」
「あぁ」
「じゃあ、シズちゃん頑張ってね。ばいばーい、いたっ!」
「イザイザ、逃げちゃダメよ?私に当たったナイフはイザイザの物でしょー?二人とも私の要望に応えてちょうだい」
「いたい痛い!ちょ、女の子の癖になにこの腕掴む力!」
「腐女子の底力っすよ」
「何それ恐い」


こうして臨也と静雄を捕獲した狩沢は、いそいそと何処かへと電話を掛け始めた。
弾んだ声と、輝くような表情を見れば、楽しくて堪らない、というのがすぐに分かる。
静雄はそれを気にする様子もないが、臨也は嫌な予感しかしなかった。
臨也は腐女子という単語も知っているし、その腐女子である彼女が自分と隣でアホ面している静雄を、セットとしてどういう目線で見ているかも知っている。
だから嫌だったんだ、と溜め息を吐くしかなかった。




「はぁーい、お待たせ!待っていたものが届いたわ。イザイザは私と一緒に来て」
「えー?嫌だなぁ…」
「シズちゃんは、ゆまっちと一緒にあっち。よろしくね、ゆまっち!」
「うぅ…、殴られそうで嫌っす…!静雄さん、俺は狩沢さんのお願いで動いてるだけっすから!暴れないでほしいっす」
「わ、分かった…」
「えへへ、楽しみだなっ!じゃあまた後でね」


自分が暴れるな、と言われる程の事をされるのか、と静雄はぶるり鳥肌を立たせた。
狩沢という女性がどのような人物なのか、詳しく知らない静雄は、自分へのお願いがどのようなものなのかさっぱり分からなかった。
馬鹿みたいな力を発揮するしか思い浮かばないが、それも人の役に立たつなら、と頭を抱えながら遊馬崎の後を着いて行く。
着いた大きな車の中で、見せられた物と、それをどうするかを聞いて、思わず遊馬崎を殴ってしまったが許してほしい。
動揺しない方が可笑しいような、お願いだったのだ。
「静雄さんの嘘つきぃ!」
と叫ばれて、素直に「悪い」と謝る程に、静雄は混乱していた。






「やーん、シズちゃん可愛い!いかにも女装!って感じで萌えるわね」
「なんで俺がこんな格好…」
「化粧とかしっかりしたらもっと似合うっすよ」
「嬉しくねぇよ…」


準備ができた静雄は、水色のロリータ服を身に付けていた。
白い丸襟の長袖ブラウズに、水色のジャンパースカート。
パニエで膨らませたスカートの裾には、お菓子のプリントがしてあり、背中には大きなリボンがある。
白のタイツにも、側面にお菓子のプリント。
水色の先が丸い靴は、甲の部分でベルトを交差するタイプで、控えめなリボンが可愛い。
頭には同じく水色のヘッドドレスが付けられている。
所謂甘ロリという部類のものである。
本来膝より下まであるスカート丈が、膝上になってしまっているのはサイズが見つからなかったからなのか、わざとなのか、静雄には分からない。
ふわりとした作りのため、ある程度体系が隠れるにしても、元々体格がいい静雄は、それを着ていても男にしか見えない。
化粧もほとんどしていないので、更に違和感ばかりである。
移動した先が、立体駐車場のような場所で、他の人に見られる心配がなく、静雄はほっと息を吐いた。


「次はイザイザだよ。本気をだしたから自信作!」
「さすが狩沢さんっすね」
「イザイザー」
「はいはーい。イザイザですよー」
「なんだ手前、ノリノリじゃねぇか」


もう一つの車から出てきた臨也は、黒のゴスロリを着ていた。
袖が広い長袖の裾にはリボンが付いていて、所謂萌え袖のように丈は長い。
胸の辺りはアクセントで白い布とフリルがボリュームを出し、後ろの腰辺りには大きなリボン。
スカートは黒の布とフリル、それからこちらもアクセントで白いフリルが控えめに付いていた。
静雄とは違い、膨らみを強調しないように、パニエはボリュームのないものを使用してある。
軽く膨らんだスカートの下は、フリルが付いた膝丈ソックスと、ヒールのある先が丸い靴。
更に臨也は、姫カットパッツンでロングストレートの黒ウィッグを被り、更に大きめのボンネットを被っている。
王道的なゴシックアンドロリータである。
化粧まで完璧にしてあり、狩沢が自信作と言うだけあって、とても似合っていた。


「いやー、自分でもびっくりするくらい似合ってるよね。俺、普通に可愛いよね?」
「うんうん、イザイザ可愛いよ!」
「ノミ蟲まじきめぇ」
「君には言われたくないよ。で、俺はこんなに本気出して、シズちゃんはなんでアレなの?中途半端すぎじゃない?」


臨也が指差す先には、水色のロリータで不機嫌に不貞腐れている静雄。
臨也のようにウィッグも被っていなければ、化粧も薄い。
格好だけが完璧で、どう見てもバランスが悪い。
自分がここまで顔と頭も弄られたのだから、静雄ももちろんそうなっているのだろう、と想像していた臨也はムッとした。


「わざとだよ。だってー、完璧にしたらシズちゃんも似合っちゃいそうじゃない?」
「それの何がいけないの?」
「タチまで女装が似合ったら、ネコが引き立たないじゃない。私的には両方似合っても萌えるんだけど。王道で体格的に考えたら、シズイザでしょ?だからシズちゃんは着ただけロリータなの」
「君は間違っているよ。観察力が甘いね」
「なぁ遊馬崎、タチとネコってなんだ?タチって動物いんの?」
「静雄さんは知らなくてもいいっすよ。なんか臨也さんまで暴走しだしたけど大丈夫っすかね」


ふぅん、と言った静雄は、既に会話への関心が薄れている。
早く服を脱ぎたいのか、ソワソワしだした。
ヘッドドレスが気になるのか顎下を触ったり、スカートの裾を軽く摘まんでみたり。
そして見えたお菓子のプリントを見て「プリン食いてぇ」と呟いたのを、遊馬崎は聞き逃さなかった。


「まず、俺がタチで、シズちゃんがネコだ」
「えっ、シズイザじゃなくてイザシズなの?!」
「そうだよ。現実はイザシズさ」
「えっ、てかイザイザの妄想じゃなくて本当に?」
「妄想って何、失礼な人だね。ハメ撮りでも見る?」
「見る見る!」
「しょうがないな、特別だよ?」
「自慢したいだけなんでしょ」
「えへへ」
「その格好でえへへとか止めてイザイザ!」


遊馬崎が静雄に、ロリータ娘がいかに可愛いかの呪文を唱えていると、臨也と狩沢の会話が止まった。
響くのは遊馬崎の熱い声のみになった。
遊馬崎の話を右から左へ流して聞いていた静雄は、それに「おや?」と首を傾げる。
と同時に、耳を疑うような音が聞こえてきた。
『「っ、あ、ゃだ…」「シズちゃんの可愛い所、ちゃんと録れてるよ」「くそ、ばかっ…ふぁ、」』
自分の声は自分では分からないと言うし、更に機械を通している為、静雄は一瞬誰の声なのかわからなかった。
しかし、相手の声は聞き慣れている。
更に自分の名前が出たのを耳にして、今臨也と狩沢が見ている物が、前日セックスした時の物だと理解した。
カッと顔が熱くなり、怒りと羞恥心が急上昇する。


「手前…!何見せてんだよ馬鹿っ、消せって言っただろ!」
「消すわけないでしょ、こんな良いオカズ。ちなみにこの携帯壊してもデータはなくならないからね?ざんねーん」
「くっそ、死ね、」
「しししシズちゃん!」
「うおっ?!」


携帯に飛び付こうとした静雄を、ヒラリ避けた臨也は、涼しい顔で携帯の画面を見せ付ける。
静雄の口調も荒くなり、ピリピリした空気の中へ飛び込む勇者が一人。
静雄に飛び付いた狩沢は、ランランとした目で、驚いて見開かれた瞳を見詰める。
あまりにも気迫があって、静雄は思わず拳を下げ、話を聞く体制をとってしまった。


「シズちゃんネコなの?ネコなのね?」
「俺は人間だぞ」
「あぁんもう可愛い!腐女子はお腹いっぱいです!」
「静雄さん、抱かれる側って意味っすよ」
「だっ…、はぁ?!」
「そうだよ。いつもシズちゃんは俺の下でアンアン言ってるよ」
「手前マジ喋んなよ、クソノミ蟲」
「どうなの、本当なの?イザイザの妄想なの?お詫びに何でも聞いてくれるんでしょ?ね、ね!」
「…あー、まぁ、なんだ。……その通り、だな…」
「イザシズ確定きたぁぁぁぁぁ!妄想が現実!ホモを目の前にして、私は今神に慣れたような気がしている!あああああこれは家に帰って原稿やるしかない!次のイベントで出すぅぅぅ!」
「狩沢さん落ち着くっす!それ需要あるんすか?!」
「ホモに需要なんていらないの。自分の欲望を吐き出すのみよ」
「男前っす狩沢さん!」


更に暴走しだした狩沢は、どこからともなくメモ帳とペンを取だし、すごい勢いで何かを書いている。
呆気に取られた静雄と、「それ俺にもちょうだいね」と楽しそうな臨也に、そのまま服をあげて、その夜狩沢は「ゴスロリ臨也×ロリータ静雄」のR18を描き上げ、後日のイベントで出したという。
本人たちが当日なり後日なり、その衣装を使用したかどうかは、狩沢にも分からない。



―――

説明力のなさに全俺が泣いた。
ツイッターで一緒に盛り上がってくださった。シチさんへ。こ、こんなんでごめんなさい。煮るなり焼くなりしてくださいー。

だれかこのイザシズをイラストにしてください(絵描けない人)









「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -