嘘ついたら針千本飲んでね?


・サイケはパソコンのソフト的な何か
・CP要素はあるようでないようで…ぼんやり
・ほぼ二人の会話文





「臨也くーん」


カタカタと鳴るキーボドの音が響く部屋。
今日の仕事は終わっているし、趣味の人間観察と、火種を増やす事に集中していると、ひっそりと名前を呼ばれた。
ぴたり音を止めてそちらを見ると、ピンク色の目とぱちりかち合った。
そろり上半身を覗かせているのは、自分と同じ顔をした、サイケだ。
ずっとパソコンを見ていた目には、サイケの白い服は少し目に痛い。
俺の顔を窺うように、少し上目でこちらを見るサイケに、「入って良いよ」と声を掛ければ、トタトタとフローリングを鳴らして近くのソファへと移動した。
俺から目線は外されない。


「どうしたの、こんな時間に。いつもはもうスリープ状態でしょ?」
「まだ充電沢山あるから大丈夫だよ」
「そう」
「ねぇねぇ、何してるの?仕事?」
「違うよ。仕事は終わったさ。お前のフォルダーやシステムは、何も動いていないだろう?」
「まぁね。じゃあ、いつもの趣味?」
「そうだよ」


ふぅん、と言ったサイケは、自分から聞いたくせに興味のないような返事をする。
何かを探るような視線は、自分もしている動作なのだろうか。
正直居心地が悪い。
そんなピンク色の球体が煩わしく、パチパチと指を再び踊らせることに集中した。
様々な情報が飛び交う場所に目を通し、必要な物は自分の頭へ。
使えそうな場所にはネタを書き込み。
いつものようにすいすいと回線を泳いでゆく。
そんな中、シズちゃんの情報収集と、陥れる罠も忘れない。


「あ。今、シズちゃんのデータ拾ってるでしょ」
「こら。勝手に繋ぐな」
「シズちゃん有名人だもんねー。嘘も本当も、沢山情報が溢れているね」
「そうだね。まぁ、その中に俺が流したデマもあるんだけどね」
「本当の事は絶対流さないもんね、臨也君は」
「……そうだね」


何だ、嫌な言い方をする。
ごろりと大きなソファに伏せになり、肘を立てて上半身を起こしたサイケは、楽しそうに笑っている。
コイツは最近、読めない表情をするようになった。
俺に似てきたのだろうか。
それはそれで、何だか気持ちが悪い。


「ねぇ、臨也君。何で臨也君は、そうやって沢山の情報を集めるの?」
「何でって…。お前も知ってる通り、俺が情報屋だからだよ。それに、俺は人間が大好きだからね。大好きな物の事って、何でも知っていたいだろう?だから沢山の情報を集めて眺めているのさ。本当はまだまだ足りない位だよ。俺はもっともっと、人間の事が知りたい」
「ふぅーん。臨也君は好きだから、情報を集めているんだね」
「そうだね」
「じゃあさ、じゃあさ、シズちゃんの情報を一番集めているのは、何でなの?だーい好きだからなの?」


肘をついたまま指を組んで、その上に顎を乗せたサイケは、優しい目元でどうなの?と聞いてくる。
何を馬鹿な事を。
今までも散々言ってきただろう?
平和島静雄が、俺は嫌いだと。
殺すために、陥れるために、少しでも情報を集めるのだと。
それを今更、何を言っているのだと、俺は笑った。


「人間の事は、好きだから、愛しているから集めている。でも、平和島静雄は別だ。アイツは化け物、排除されるべき存在なんだ。だから、排除出来るように情報を集めている。知ってるだろ?」
「うん。何回も聞いた」
「じゃあ、聞く必要はないだろう。邪魔をするだけなら、大人しくしていてよ」
「ねぇねぇ、臨也君」
「もぉ、なんなの。邪魔するなって、」
「何でシズちゃんだけなの?」


は?と口から出た声は、自分にしては間抜けた声だった。
思わず眉間に皺が寄る。
コイツは、俺に、何を聞きたい。
俺の何を知りたい。
知った所で、どうするつもりなのだ、コイツは。
ピンク色の瞳は、相変わらず探るような光をしている。
それを俺も探る様に見つめると、ひやり空気が糸を張った。
初めてサイケの纏う空気に、ぞわりとした。
こんな空気を、出す奴だっただろうか。
いや、アレがいたときは、こんな…。


「ねぇねぇ、化け物って、シズちゃんだけ?セルティって言う運び屋は?園原杏里は?彼女たちも、化け物だよね?ねぇ?あの人たちは、排除しないの?殺さなくていいの?」
「……彼女たちは、駒だ。死なれたら困る」
「何で何で?あの人たちも、全部思い通りになるわけじゃないでしょ?シズちゃんと何が違うの?」
「だから、シズちゃんは…」
「臨也君、臨也君。ねぇ、臨也君は?臨也君は人間なの?」
「は?」
「臨也君、みんなから何て呼ばれてるか知ってる?悪魔とかー。信者の人には神様って、言われてるよ。臨也君も、人間に見られていないんだよ!」
「…何が言いたいの、サイケ?」
「自分も人外である存在なのに、人外である内の一人だけを必死に殺そうとしているなんて、滑稽だね、臨也君」


すっと、細められた目と口。
笑みを表す形へと弧を描いたそれらは、とても綺麗だ。
けれど、綺麗なそれは、真っ黒だった。
自分もこんな顔を、するのだろうか。
いいや、こんな複雑な、ごちゃごちゃした真っ黒な笑顔は、きっとした事がない。

ぞわぞわと這い上がる何かが背中を駆け上がって、それから今度は汗が背中を流れ落ちる。
俺は今、何と喋っている?


「どうして平和島静雄に、そんなにこだわるの?何が、羨ましいの?同じように化け物って、悪魔って、人外だと言われるようになったじゃない。何が嫌なの?そんなに嫌なら、作らなければ良かったのに」
「サイケ、」
「ねぇ。津軽を返して、折原臨也。君の嫉妬と執着で、俺の大切な物を勝手に消すなよ」
「津軽は、もう…」
「アンインストールなんて、出来てないんでしょう?知っているよ?消せなかったんだよね?だから、凍結してあるだけだ。でも俺じゃ戻せない。ねぇ、返して」
「なんで…。お前の記録からは、消したはずなのに、何で、津軽を知っている?」
「僕を高性能に作ったのは誰?君じゃあないか!簡単には消させないさ。そんな高性能な僕だから、今から僕を消そうとしても駄目だよ。そんな事したら、臨也君のデータ、ぜーんぶ流しちゃうからね」


だから返してよ、お願い。
首をこてんと倒して上目使い。
ピンク色はキラキラしている。
普段は可愛らしく見えるお願いポーズ。
それを見ている、ごくりと鳴る俺の喉は、カラカラだ。
まさか、コレがアレに執着していたとは。
しかもこんなに、深く。
いや、サイケが津軽を気に入っているのは知っていたのだ。
でもまさか、こんなに。


「……分かった。津軽を戻そう」
「本当?ありがとう!臨也君、だーい好き!明日のお昼までにっ、約束だよ?」
「あぁ…分かった」


コレの言う事を聞くのが利口だと判断した俺の返答に、顔を明るくしたサイケ。
くるくる回って、ぴょんぴょん跳ねて、喜ぶ姿は無邪気そのもの。
先程までの空気は一瞬にして消え去り、全身を覆っていた何かが外れ軽くなった。
どっどっ、と忙しなく血液を送る心臓は、もう少しの間、落ち着きそうにない。


「臨也君」
「っ、なに?」
「化け物は、化け物を理解出来るよ。だから、仲良くなっちゃえばいいじゃない」
「はっ、」
「じゃあ、明日楽しみにしてるね!おやすみ、マスター!」


ばたん。
閉じた扉の音が大きい。
遠くなる足音が軽快なのに、ホッと息を吐く。


「くそっ」

今更、アイツと仲良くしろと?
無理に決まっている。
俺も人外になれました、だから一緒にいませんか、なんて、言えるとでも?
受け入れてもらえないに決まっている。

「全部…全部シズちゃんのせいだ。くそ、むかつくな。本当。早く死ねばいいのに」

パソコンの向こうで眠る青い青年。
それを見ていたら、何だか鼻の奥がつんとした。



―――

友達に誕生日プレゼント何がいい?って聞いたら
「けちょんけちょんにされる(厨二病な)臨也君が欲しいです」
って言われたので書いてみました。

難しいわwwwwけちょんけちょんって、こうですか?今回は精神的に苛めてみましたけど、けちょんけちょんにできてるんですかね!!よくわからない。
私はサイケたんを腹黒攻めキャラだと思っている。腹黒無邪気攻めっておいしいですよね!!でも派生キャラは良くわかってません。好きなんですけどねー。









人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -