S+M=?


※軽く流血があります。あとちょっとマニアックかもしれない。
それでも良い方はどうぞ。







がつん。
がたん。
がしゃん。

肌と肌がぶつかる音。
肌と物がぶつかる音。
物と床がぶつかる音。


物とぶつかった平和島静雄は、肌をぶつけてきた折原臨也を下から眺めた。
いつものように、殴った拳は赤い。
頑丈で、固い静雄。
全力で殴れば、殴った方が痛いのは、殴られた彼も、殴った彼も、知っている。
それでも臨也は、倒れた静雄に跨り、更に殴る。
同じ頬を殴られ、同じ方に顔が傾く。
そうしたら今度は、反対の右の頬に、左手の爪を立てた。
ぎちぎち、音を鳴らして引き裂かれる頬肉。
それでも静雄の頬は、深くは抉れない。
しかし静雄も人間である。
皮膚が裂かれれば、血は出る。
流れる赤い液体を見て、臨也はぞくぞくと快感が駆け上がるのを感じ取った。
その快感を強める為、今度は左手で、右頬を叩く。
ちょうど縦に線の入った、赤い箇所。
血が飛んで、伸びて、静雄の顔を更に赤くした。


「臨也、痛い」
「痛い?本当に?俺はきっと、君以上に痛いよ。拳とか、掌とか!」
「そうか。そりゃー、良かったな」
「本当に、君が恋人で良かった。大好きだよ、シズちゃん。愛してる」
「俺も愛してる」


愛を囁き合って、微笑み合う。
ちゅっ、と唇にキスをして、臨也は立ち上がった。
短く、綺麗に整えられた爪にこびり付いた血と肉。
それをぺろりと舐め、自分の口の中へと入れしゃぶる。
人差し指と中指の先端を吸えば、静雄の味がした。
それに満たされた気持ちになりつつ、今度は腹を蹴る。
昔から喧嘩をし、殴られ、蹴られてきた静雄は、腹も固い。
むしろ全身が、普通の人間のように柔らかくない。
固い、壁や床を蹴った感覚だ。
先程と同じく、蹴った臨也の足が痛んだ。
こんなに固い体をしているというのに、セックスの時触れ、撫でまわす皮膚は何故あんなに柔らかいのだろうか、と臨也はいつも疑問を抱く。
がつがつと腹に蹴りを入れる臨也を、静雄は依然、眺めたまま。
少しの痛みに、わざと顔を歪めてやったり、抑えることなく出る声を漏らせば、臨也が喜ぶことを、静雄は知っている。


「っぐ…同じ、所ばっか…」
「あぁ、痛い。足が痛いよ、シズちゃん」
「ちょ、てめ…、今日はやり過ぎ、だろ」
「そうかな?足が痛い、さっき殴ったから手も痛い。でも、まだ足りないよシズちゃん」
「それ以上やったら、お前の手足が壊れるぞ」
「それは困ったな。壊れたら、痛みを感じられなくなっちゃう。残念だけど、今日はこれでおしまいにしようかな」
「うぐっ?!…っかは!」


どすん、と最後に左の胸を踏みつければ、静雄は苦しそうに咳き込んだ。
肺と心臓付近。
そこを勢いと、全体重で踏みつけられたのだ。
流石の静雄でも、これには唸った。
そんな静雄を見て、臨也は下半身に熱が集まって行くのを感じた。

服を捲れば、同じ個所を何度も蹴ったせいで変色した横腹。
何度か殴った左頬は赤くなっており、血がこびりついた右頬も、これまた赤い。
自分の手が、足が、愛するこの化け物をこうしたのだと考えると、堪らなく興奮した。
そしてもう一つある、興奮材料。
それが、じんじん、ずくずくと痛んでいる手と足だ。
静雄を強く殴って、強く蹴って、その代償として与えられる痛みが、堪らなく好きだった。
痛い、と感じる事に、快感が全身を走り、興奮する。
折原臨也は愛する物を傷付け、歪む顔を楽しむ一方で、自分に与えられる痛みに興奮するという、非常に厄介な性癖の持ち主だった。
Sであり、Mなのだ。


臨也は静雄と違い、これまでにもあらゆる人間と交際をした事がある。
もちろん、人間観察の一環として、というのが大きいが。
その交際相手は、常に数人いた。
一人だと、どちらかの性癖が、満たされないからだ。
Mに近い人間と付き合えば、多少痛めつけても許される。
だが、こちらを痛めつけてはくれない。
Sに近い人間と付き合えば、多少痛めつけてくれる。
だが、あちらを痛めつけられない。
どちらも一緒に得る事など、出来なかった。
だが、静雄ならどうだろう。
こちらが痛めつけても、痛みに鈍感な静雄ならば、全力でぶつかれる。
それと同時に、強く固い静雄に攻撃をすれば、自分が痛い。
相手の傷や、歪む顔、呻く声を楽しみながら、自分を襲う痛みも楽しめるのだ。
こんな強い快感と興奮は、今までになかった。
もうきっと、臨也はこれらから、離れられない。


ここで勘違いしてもらっては困るが、二人は体だけの関係ではない。
恋人同士で、二人の間にはしっかりと愛がある。
臨也は自分の性癖の相手にぴったりだ、と言う点を抜きにしても、静雄を愛している。
静雄も、こんな臨也を受け入れる程に、彼を愛していた。
愛し合っている、恋人同士の行為の一環として、この不気味な暴力は行われているのだ。



「ねぇ、シズちゃん。俺、興奮しすぎて、爆発しそう」
「ん…。こいよ、臨也」
「シズちゃん、ズボン脱いで。慣らさずに入れるよ」
「分かってる。その方が、お前のちんこが痛いもんな」
「大丈夫、シズちゃんの事も、ちゃんと気持ち良くしてあげるよ。乳首とか首とか、性感帯が多いシズちゃんだから、平気だよね?」
「ぁっ、んん…、はぁ」


ねっとり、首筋を舐めて、指で乳首を転がす。
唾液で濡れた首筋に思い切り噛みつくと、八重歯が刺さったのか、少しだけ血が出た。
くっきり残った歯型と、その血にまた興奮する。
そのまま唇を下げて、乳首を舐め上げてから、ぢゅうと吸い付けば、静雄の甘い声が聞こえた。
これから下は痛くなるのだ。
こちらだけでも優しくし、愛撫してやろう、とにんまり笑いながら、臨也はペニスをアナルへ挿入した。
ぎちぎちすぎるその窄みは、先へ進むことをなかなか許してくれない。
それに焦れた臨也は、少し滑るくらいのローションを結合部と自分のペニスへとトロリ流す。
冷たい感触にピクリと静雄の腰が揺れるのを押さえつけながら、そのまま一気に腰を進めた。


「ああああああ…!はっ、あぁ、っぐ、い、てぇ…!」
「んんっ…、はぁ、シズちゃんの中、ぎっちぎち…。俺の、潰されそう、痛いよ」
「ま、まて、まだ動いたら…、ぐあぁっ、ひっ」
「あぁ、いい、その顔…、大好き。はぁ、ぁ…きもちー…」
「ひ、ひっ、いざ、やっ」
「んぁ…、あ、ごめんね、痛みに夢中に、なっちゃった…。ちゃんと、触ってあげる」
「ぁ、ん…ぅぁ…あぁ」
「ぁ…はっ…、シズちゃんの乳首、可愛いね。噛み千切っちゃいたい」
「はっ、はぁ、取ったら、許さねぇ、かんな…!」
「シズちゃん乳首弄られるのっ、好きだもんね、?なくなったら寂しいか」


ぎちぎちで動きづらいであろう中を、無理矢理動く臨也。
大きくて熱いそれを、中の壁でリアルに感じながら、裂けた入り口の痛みに呻く静雄。
しかし的確に前立腺を突かれるのと、外からの愛撫に、喘ぎも止まらない。
官能的で、痛々しいその姿に、また熱を集めたそこは、限界だった。
くちくちとペニスの先端を指で刺激してやりながら、上り詰めるように腰を振った。
乱暴で、けれど的確に自分を追い込む快感に、静雄も限界だった。
開いた口は、もはや閉じようとすることもなく、いつもより高い声を紡ぎだすだけ。
その表情に、余裕などない。


「あぁっ、シズちゃんっ、イく」
「あっ、あっ、俺、もっ…!ぅ、ぁ、んん…あぁぁっ!」
「んっ、あ…締めすぎ、んんっぁっ!」


どぷり。
注がれた熱と、垂れ落ちる熱。
白濁したそれは、内と外で解放され、二人は深く息をした。
治まらない息のまま、ばちりと目が合えば、どちらからともなく、唇が吸い寄せられる。
ちゅう、と唇を吸って、それから舌を吸って。
そのままお互いの口の中を弄り合えば、口元はべたべただ。
とろけた表情を見て「あぁ、愛しい」と囁いたのは、臨也と静雄、同時だった。




―――


ちょっとした出来心だったんですすみません。
二人ともお互いが大好きですよ。本文にも書いたけど、大きな愛が二人の間にはあります。
静雄が変な性癖に目覚めるのも時間の問題ですね、きっと!!

そして相変わらずえろくないという










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