02



彼は私に教科書を貸せって言った。



でも彼は同じクラスだから、
教科書は貸せない。
彼が使うときは私も使うのだ。


これは冗談を言われてるのか、
からかわれているのか。

何が起きたのか分からないまま、
数秒、間を置いたところで
貸せない…と小さな声で返事をすると
何故か彼の周りにいる沢山の
取り巻き達は、ゲハゲハと笑っていた。


やっとの思いで振り絞った声は
蚊の鳴くような声だった。
顔が真っ赤になるのを感じた。

耐えきれなくて、私は目線をそらし俯いた。


なにを言っていいのか分からない。
どんな言葉を選べばこの場をうまく
やり過ごすことができるのか。





ああ、もしかして、この人は、
私が同じクラスの人って
知らなかったのかな。


いや、それよりも、
彼はいつも授業中寝てばかりいて
教科書なんか毎日用意してないし、
" アンタいつも教科書なんて
使ってないでしょうが! " って
冗談ぽく返すところだっただろうか。



それか、この男子のグループで
私に声をかけて、私が教科書を
貸すか賭け事をしていたとか?



ああ、ああ、あとから後悔が、沢山。
なんで今更そんなこと気付くんだ、
もう、遅いのに。


それで、なんで彼は黙ってるんだろう。
私が貸さないなんて言ったから、
怒っているの???


恐る恐る、顔を上げてみる。

うわ、めっちゃ見てる。
え、なんか、ムッとした顔してる、
なんで?え?
どうしよう、どうすべき?




「今日一緒に帰れって言ったのに、
貸せないってどーいう意味だ」


「へ?」





あ、そうか、私は聞き間違えてたんだ、
だから周りの人笑ってたんだ。

彼は独り言みたいに、
めんどくせぇって言うと、
私に肩をぶつけて、
そのまま通り過ぎてしまった。





え、え、え、
一体彼はなにを言いたいんだ、
なにを私に求めてるんだ、
めんどくさいってなんだ。


彼の後を追いかける取り巻きに、
残った私に向けるクラスメイトの
刺さるような視線。

どうやら私が彼を怒らせたようだ。



緊張の糸が切れた。
目頭が熱くなった。


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