拍手小話 | ナノ


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雷神の如く


「……やばい」

久しく疎遠になっていた体重計という名の乙女の敵。
せっせと食欲の秋にいそしんだ結果、私はついに目をそらし続けた現実を突きつけられる羽目になった。

「ダ…ダイエットせねば…!!」

しかしダイエットなどという過酷な修行を耐え抜けるほどの精神力は持ち合わせていない。というかあったら最初から太らない。
CMでお馴染みの某スポーツジムみたいに専属トレーナーでもいたらなー…と思ったところで、はたと気づく。

いるじゃん、そんな人。



翌日。
思いたったら即行動、とばかりに私は皇帝と呼ばれる男に懇願していた。

「お願い!協力して!!」

「な、何をだ」

朝一番の教室でクラスメイトからいきなり頭を下げられ、らしくもなく目を白黒させて狼狽える真田。隣にいた柳くんが面白そうにそれを見ている。

「あんたしかいないの!強靭な精神と周りの目を気にせず鉄拳制裁とかいう恐怖政治を強行するような図太い神経を併せ持ち、ちょっとやそっとじゃ諦めず私の脆弱な精神と身体を鍛え上げてくれるのは!!」

息もつかずにまくし立てる私に、真田はたじろいだ様子で聞き返す。

「事情はよく分からんが、俺の手を借りたいということだな?」

「はい!!」

「それは、他のやつには頼めないことか?」

「そりゃもう!!」

私は大きく頷く。観念したような浅い息。そして。

「……分かった」

「真田…!!」

私はがば!と頭を上げ、真田の顔を見る。気圧されたように視線をそらした真田は腕を組み直して頷いた。

「俺でなければ務まらんというのなら仕方がない。協力しよう」

「さっすが真田!大好き!!」

思わず飛びついた私に、真田が顔を真っ赤にして焦る。柳は相変わらず笑ったままだ。

「はっ、離れんか!」

「嬉しい!ありがとう!!」

「そ、それで。頼みとはなんだ?」

「あのね……このたるんだお腹を何とかしてほしいの!!!」

「…………」

真田が一瞬言葉を失う。直後───

「たるんどる!!!」

廊下いっぱいに響き渡る大声で私は喝をいれられたのだった。


Fin.


「鼓膜が割れそう……」

「痩せたいのならばテニス部に来い。マネージャー業も鍛えられるぞ」

「ええっ?!」


-END-



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