Short Story #novel5_# | ナノ

first calling


12月31日。
時刻は、23時59分。
点けっぱなしのテレビから、カウントダウンが流れ始めた。

「今年も、色々あったなぁ…」

楽しいことも嬉しいことも、苦しいことも辛いことも。
あっという間に駆け抜けた毎日。
過ぎてしまえば、どれもいい思い出。

「3、2、1…」

アナウンスに合わせて呟く。
カウントがゼロになる瞬間、携帯が鳴った。
この音は、メールじゃなくて電話だ。

「あけましておめでとう」

通話ボタンを押すと、耳に飛び込んできたのは意外な人の声。

「…白石?」

「おう、そやでー」

健康には人一倍気を遣う人だから、絶対に寝ていると思っていたのに…

「こんな時間に、どうしたの?」

「…一番に、言いたかったんや」

「え?」

「一番に、お前にあけましておめでとう、って言いかったんや」

「白石……」

そんなこと言われたら、私、期待しちゃうよ?
特別なんじゃないかって、思っちゃうよ?

「それと、もう一つ」

「え?」

「今年も、よろしゅうな」

受話器越しに響く、低くて甘い声。

…いいの?
私、期待、してもいいの?

「こちらこそ、よろしく」

祈りのような願いを心の中で呟きながら、私はそう、言葉を返した。




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