Short Story #novel5_# | ナノ

さよならの季節


「…愛してたで」

愛してた。愛してた。
ほんまにほんまに好きやった。
お前なしの世界なんて考えられへんくらいに、どうしようもないくらいに、愛してた。

「せやけど…もう、無理や」

もう、あかん。
これ以上、一緒におるんは無理や。
お前も俺ももうボロボロで、それでも俺に縋り付く、そんな姿さえ愛おしいと感じてまう。

…分かっとる。
ほんまは、まだ愛してる。
せやから、振りほどけんねん。
せやから、こんなにも胸が苦しいんや。
分かっとる。けど…

「…お別れや」

さよならは言わへん。言えへんかった。
お前を失うなんて、認めたくなかった。


近づくタイムリミットに、ゆっくりと滲み出す視界。
お前の姿も、よく見えへん。
それでも最後に目に焼き付けたくて、涙を堪えて目を合わせた。

二人で過ごした日々が鮮やかに蘇る。

いつか必ず終わりが来ること。
分かっとったけど、気づかへん振りをしていた。
大丈夫や、何とかなる、って、こんなになるまで無理させて。


もうこれ以上、俺のもとに引き留めたらアカン。
自由にしたるべきなんや。

せやから俺は、一番言いたくない終わりの言葉を口にする。

「今まで、おおきに」

応えるように、握り返された指先。
それにあの頃のような強さはなくて、身体は少し震えていて。


もう、限界やった。


















































「カブリエルぅぅぅぅぅううう!!!!!!」


















































出会いは、夏。
ちょっとした動きが可愛くて、目が離せなくなった。

季節は、冬。
カブトムシは、冬を越せない。


お前と過ごした時間は、あまりにも短くて儚い。

せやけど、俺は絶対に忘れへんよ。
お前のことも、この気持ちも。



Fin.




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