私には関係の無いことなので




特にやりたい部活も無く友人と帰宅部を決め込み毎日授業が終われば二人で一緒に寮へと帰っている。その度に今日は新開くんと喧嘩しなかったかと聞かれ、いい加減やめてほしくて溜め息が出る。そんなに心配性なんかじゃない彼女は私のうんざりとした反応が面白くて聞いてるだけ。悪趣味すぎる。

「どう?新開くんと喧嘩してない?」
「そんな毎日する程喋んないし」
「前も仲良く喋ってたしね」
「あれをどう見たら仲良くって言えんの」

私も新開悠人も顔こそは笑っていたものの、それは完全に作り笑いで楽しい訳じゃなく口から溢れていた言葉はとても仲が良いと言われるようなものではなかった。あれを目の前で聞いてたクセに耳壊れてんのかこの子は。

「新開悠人だろ?」

校門から出ようとすれば細い車体の自転車を片手で引いて歩く三人の男の人と擦れ違い、その三人の内の一人が言った名前は新開悠人のものだった。多分あの三人は先輩なんだと思う。正に今そいつの話をしていた私達は自然と会話に耳を傾けていた。

「確かに速いんだけどさ」
「あの態度がどうにかなんねぇかな」
「新開さんがいたからな、誰も何も言えねえよ」

アイツ確かお兄さんの事で部で一悶着あったって言ってたけど一年のクセに上級生困らせてんのか。とんでもない奴だな。まぁでも、出来る優秀な先輩がいて、その弟が入れ替わりで入ってきたからって何も言えず野放しにしてる周りの方もどうかと思うけど。先輩と後輩で上下関係があるのは当たり前で特に運動部なんてもっとそういった事に厳しい気がする。先輩の弟ってポジションは他の周りの人達も大変なんだな。

「新開くん言われてんねぇ」
「一回痛い目見たら良いんじゃないの」

それが物理的なものだったら大問題だけど、誰かが新開悠人に物申したり出来れば何か変わるんじゃないか。部活で気に入らない事があれば引き摺って雰囲気悪いまま隣の席にいる訳だし、それではまた私までイラついてしまう。

「あんたが声掛けてあげなよ」
「なんで」
「隣の席になったんだし」
「やだよ、面倒臭い」

なんで私が態々嫌な思いして心配してやらないといけないんだ。まず私が声を掛けたところでお互い喧嘩腰でしか会話出来ないし、売り言葉に買い言葉でこっちまで気分悪くなるだけだろ。そんなの御免だ。

「あっ、ねぇ、あれ新開くんじゃない?」

校門から出た先に自転車に乗って走ってくる新開悠人の姿が見えて、制服とは違ってさっき擦れ違った先輩達みたいなジャージを纏って真剣な顔をしている。見慣れない形の自転車は無駄に細くてカッコ良くて私が乗ったらバランスを崩して転んでしまいそう。

「こうやって見るとやっぱ新開くんカッコイイね」
「うん、そうだね」
「え」
「とはならないわ」

顔は整ってると思う。でもアイツのめちゃくちゃ機嫌悪い歪んだ顔を見せられてカッコイイだなんて素直に思えない。あの顔ほんとにすっごいブサイクだからね、皆にもちゃんと見てほしいぐらいだ。自転車に乗って颯爽と走り去る姿を目の当たりにしてもカッコイイと言うよりカッコつけてんなよって気持ちの方が遥かにでかい。

「なんだ、ちょっとビックリしたじゃん」
「顔は整ってるけど中身が残念すぎ」

どんだけ顔が良くたって中身が悪かったら意味が無い。新開悠人は見た目だけで性格は最悪。私も気が強いせいですぐに突っかかってしまうから少しは悪いのは認めてるけど、それにしても顔を合わせるだけで口喧嘩ばかりしてしまう奴なんて初めてだ。

「でも新開くんが喧嘩するのってあんだぐらいだよ」
「なんで他の人は気にならないの」
「気にならないって言うか、近寄り難いんだと思う」
「新開悠人に?」
「誰も声掛けるなってオーラが出てるじゃん」

出てるじゃんって言われても、時々凄いイラついてるのは分かるけどそんなの分からない。皆それで声掛けたりしないのか。そう言えばクラスで誰かと喋ってるところを見た事なかった気がする。え、あいつ友達とかいないの?いや私も友達なんて今一緒にいるこの子ぐらいしかいないから完全にブーメランだけど。それでもクラスメイトとは挨拶だって普通にするし、たまに軽い会話も交わしている。

「新開悠人って私より友達いないんじゃないの」
「え、そこ?」

誰とも関わりたくないタイプなのかもしれないから余計なお世話かもしれないけど寂しすぎるだろ。入学したばかりの今そんな状態でこの先三年間どう過ごすつもりだ。ずっとぼっちのつもりか。誰か菩薩のような懐の人が現れて友達になってあげたら良いのに……私は無理だけどな。

「修学旅行とか楽しめるのかな」
「なに、なんの心配してんの」
「あのままじゃ友達出来ないよアイツ」
「あんたも私以外に友達作りなよ」

勝手に新開悠人のこの先を想像して心配していれば呆れた顔で私の友達のいなさを突かれてしまった。いや、まだ仲良くなりきれていないだけで別に友達ぐらい作れるし。大きなお世話だ、と言いかけて私が新開悠人の交友関係を心配したのも本人にとったら大きなお世話だと言い返されるのを感じて口を噤んだ。


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