女装男子 | ナノ
女装男子、(仮)友人ができる。

気がついたら席についていた。因みに一番後ろの窓際、絶好の昼寝ポジションだったけど、あまり喜べない。なんて言ったって
あんなクソ噛み噛みの自己紹介して、しかも大声というオプション付きで……、もう明日から学校来るのやめよう。だって、もしあんな自己紹介した奴がいたら、俺なら爆笑するもん。笑い者だよ。

「泣きたい」

心は泣いてるけど、顔には出さない。噛み噛み自己紹介したけど、まだなけなしの男としてのプライドがあるんだからな。女装してるけどさ。
それに、周りからの視線は怖いし。穴が開くほど見られてるよ。もういいよ、やめてよとか思う。

「あー、一限は俺だったな。……どうせお前らまともに授業受けねぇだろうから、今から飛鳥に質問タイムってことで」

と、恭也先生はそんなことほざいて教室から出て行った。おい、先生としてそれはどうなんだよとかありがた迷惑!!とか思ったよ。でも、突っ込む気力がなくてもう机に顔を埋める。視線は怖い、噛み噛み自己紹介で恥ずかしいし、帰りたい。

「えっーと、小鳥遊さん?」

隣から声をかけられた。無視したい所だけど、隣は不良だし、話しかけられて無視するのは流石に誰でも嫌だろうと顔だけ隣に向ける。

そしたらびっくり。
黒髪のイケメンがいた。頬杖して、俺の方をにっこりと笑っていた。前の学校でイケメンはいたけど、この人よりイケメンはいなかった気がする。語彙力少なくてごめん、でも凄くイケメンって事だけでも伝わってくれると嬉しい!!。

「あ、う、うん」

返事も噛み噛みだよ。噛み噛み星人って俺のことだ。でも、顔向けただけでニコニコ笑顔を振り撒かれたらこうなるよ。

「俺、四辻涼太。涼太でいいから」

「あ、うん。わかった、俺も飛鳥でいいよ?」

「へー、女の子なのに俺呼びなんだ?」

「か、かっこよくなりたくて?」

何回この話するんだって思うけど、やっぱり気になるよねと考えてたら、涼太はプッと吹き出した。この反応も恭也先生にされたな。

「飛鳥はかっこいいより可愛い方が似合うって。自己紹介、噛んじゃってて可愛かったよ」

「う、うるさい!。自己紹介の事は忘れようとしてるんです!」

顔が赤く染まってるのが分かる。どうしてこう恥ずかしい出来事を掘り出してくるのか。まぁ、面白いからなんだろうけど、当事者としては本当にやめて欲しい。顔から火が出る、燃やしちゃうぞってくらい。

「真っ赤で可愛い。やっぱり飛鳥はかっこいいより可愛い」

「うぅー、涼太はイケメンですね!」

「それ、馬鹿にしてるつもりなの?。でも、ありがと」

と、イケメンはまた笑い出した。決して暴言になってないし、むしろ褒めてるし。もうやだやだ。顔を隠したくて、再び机とこんにちは。隣から隠しちゃったとか笑ってる声がするけど、もう無視ですよ。無視無視。

「あーすーか、質問してい?」

「………どーぞ」

そういえば、この時間は質問タイムだったな。というか、周りも静かな気がする。朝の騒がしさは何処にと考えてたら

「飛鳥の特技は?」

まともな質問がきた。でも、特技って程の特技が思いつかない。無趣味って感じだし、凄いでしょと自慢する特技ないし……。
うーんと考え、ぱっと浮かんだ

「料理」

「へー、何作れるの?」

「基本何でも。母さんが料理は俺に任せてて何時もやってたから、一通りは出来るよ。でも、凄い一流の料理人が作る様なものじゃなくて、家庭的なものしかできないけど……」

話しながら、ゆっくり頭を上げたけど、視線は自分のスカート。あんまり料理が得意って言いたくないんだよな。男で料理ができるとか言うと、変な目で見られたし、女顔のせいでやっぱり女なんじゃないかって疑われたし。でも、今は女の子の格好してるからいいやと思っていってみたけど、誰も何も言ってくれないんだけど。

何でだと思い、隣をちらっと見ると、口元を手で隠してる涼太の姿。え、吐きそうなの?と、心配してたら

「「「「キタアアアアアアア!!!」」」」

「ひっ!?」

今度はなんだと前を向いたらガッツポーズしてる不良たち。何が来たんだ、敵襲か!?ってくらいの騒ぎよう。本当何が来たの、逃げればいいの、俺?。

「り、涼太、何か襲ってくるの?」

「え、何も襲ってこないよ」

「嘘?!、じゃあ、何でこんなに騒いでるの」

「んー、飛鳥が可愛いからだよ」

と、涼太はまたイケメン笑顔を出す。
質問の答えも答えになってないし。意味わかんないし。でも、敵が来るわけじゃなくて一安心。もう、不良たちの叫び声はBGMだと思うことにする。

「でも、勿体ないなー」

「何が?」

「飛鳥が女の子で」

「??、俺がお、女の子で何が勿体ないの」

女の子じゃないけど。女じゃないけど。自分で言って寒気がしたけど、俺は男だ。でも隠さなきゃいけないから我慢我慢。俺は強い子だ。

我慢我慢と、言い続けてたら涼太はにっこりと笑い、

「俺さ、ゲイだから。もし飛鳥が男だったら速攻で落としてたなって」

「へ、へー…………え?」

寒気がした。
色々ダブルで来たぞ。ダブルパンチだ。死語とかいうなよ、ダブルパンチだ。一旦整理しよう、涼太はゲイ。おーけー、おーけー。まぁ、恋愛対象とか云々は人それぞれだからゲイだろうが何だろうが、俺は頑張れ!って思う。そしてもう一つ。俺が"男"だったら"落としてた"?。は??。

「え、えっーと、涼太くん」

「涼太でいいって」

「わかった、涼太様」

「飛鳥、呼び方が凄いことになってる」

「そそうか、涼太国王陛下」

「わー、俺、いつの間にか国王陛下になってたのか」

クスクス笑ってるけど、俺はそれどころじゃない。キャパオーバーだ。
涼太は、それでと催促してきたから言葉を綴る。

「もし俺が男だったらどうしてたって??」

「ん?。口説き倒して落として、ねちょねちょにして、監禁して俺だけのものにするよ」

「そそそそそうかそーか、うん!わかった!お休み!」

机に頭を打ち付けた。

「飛鳥、もう寝るの?おやすみー」

とか呑気な声が聞こえるけど、それどころじゃない。よし、もう一回整理しよう。俺は男だ。女装してるけど、男だ。これを忘れるな、飛鳥。そして、涼太はゲイで男の俺がいたら、監禁するらしい。そう本人に言ってきた。そうか、監禁か……………。


ふ ざ け る な。

バラす気は更々ないけど、もしバレた後が酷いぞこれは。だって、もしバレたとしても『あいつ女装癖なんだぜ、ぷぎゃー』って言われるくらいだと思ってたし、県外の高校だから地元に戻れば怖くないとか思ってたし!?。なのに、涼太の事を知ってしまった今、もしバレたら確実に捕まる気がする。俺の危険警報機がバンバン鳴ってる。
とりあえずあれだ、距離を取ろう。そうすれば、例えタイプじゃなくても距離をとっていれば飽きr

「寝てるかもだけど飛鳥。俺、君の事気に入ったからこれから一緒にいよーね」

異様に近い、寧ろ耳元で囁かれた。
ビクッと震えたけど、何も言ってこないから気づいてないのか……。
危険人物は俺の頭を優しく撫で、何処かへ立ち去った。

「涼太さん、何処か行くんですか?」

「ん、ちょっとね」

「お供します!」

「要らない。それより飛鳥のこと見てて」

ガラガラと扉が開く音がした。涼太が教室を出ていったんだろう。そう思ったら、ぷはっと息を吐き出した。気が付かなかったけど、息が止まってたらしい。

とりあえずどうしようか。
でもまぁ、一変に色々来たからとりあえず疲れた。本当に寝てしまおう、現実逃避だ。



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