女装男子 | ナノ
女装男子、大群に会う

キーンコーン、カーンコーン

何処からともなくチャイムの音が響いた。案内の途中でも何回かこの音は聞いており、食堂の壁に付いてる時計を見れば昼休みの時間だった。結局2、3、4時間目をサボってしまった。転校初日からこんなにサボっても大丈夫だろうか…と不安になったが、案内中に涼太にそのことを話したら

『みんなサボってるから大丈夫。それに一がノート取ってるから安心して』

と言われ、胸にストンと落ちた。そうか、ここは不良校だった。真面目に授業を受けてる奴の方が少ないか。後で一くんからノートを写させて貰おう。お礼にお菓子とか作った方がいいかなと考えたときだった。

『バタバタバタバタっ!!!!』

廊下から何かが迫ってくる音が響いた。地鳴りってぐらい煩いし響く音。
びっくりして隣に座る涼太の裾をキュッと握る。

「チッ、廊下は走るなとあれ程言っても聞かないとは、猿ばかりだな…」

「まー、飯は大事だし。席がないと困るからしょうがないっしょ」

「……ご、ご飯?」

「飛鳥ー、ここは食堂って言ったでしょ。飯を食う以外ここに来る事ないでしょ?」

「そうだけど…、地響きするくらい急いで来なくても…」

確かに4時間目ってお腹は空くから早く食べたいって気持ちは分からなくないけど、そんなに急いで来る事ないんじゃないかな。購買とかと違って注文制っぽいこの食堂なら売り切れってことは無さそうなのに。

「んー、急ぐ理由を言うならアレかなー」

「アレ?」

チラっと涼太は生徒会長の方を向くと、生徒会長は大きく溜息を着き口を開いた。

「チーム同士の争いを一切禁じたせいで些細な事に勝負意識が生まれてしまってな。これもどっちのチームが一番早く食堂に入れるのか競争をしてるんだ。危ないから止めろと言ってるんだが、中々命令を聞かん」

鋭く尖った目で食堂の入り口を睨み付けると再び溜息を着く生徒会長。この人も苦労してるんだなと静かに心の中で合掌。
とりあえずこの地鳴りみたいな足音は全て競争のせい。まぁ、敵同士で、しかも喧嘩を禁じてるんだから些細なことで争うのも仕方ないか。でも、煩いけどなと俺も入り口を睨み付けたら、

「いっっっっちばーーん!!!」

黒髪の見覚えのある男が食堂に入ってきた。その後からクソっ!と悔しがりながら入ってくる黒髪やカラフルな髪の男たちがゾロゾロ。
一番に入ってきた男はキョロキョロと辺りを見渡すと

「あ」

俺たちを指差しながら歩いてきた。
ニコニコと初めて会ったときと同じ笑い方をしながら。

「あ、一。今日はお前が一着か」

「はい。涼太さんからここにいるって連絡を貰ったんで急いで」

「俺が連絡したのチャイムが鳴った後なのによく一着取れるよな」

「涼太さんが褒めるなんて珍しいですね。貴方も本気出せばこれくらい簡単でしょ」

「当たり前ー」

意地悪く笑う涼太の隣に立つ一くん。まさかあの地鳴り集団の中に知り合いがいたとは。しかも、チャイムがなった後から来たのに、校舎の違う食堂に一番で着くとは……常識人って思ってたのに意外と違うのかも知れない。
じっと一くんを見ていたら、俺の存在に気がついた彼が覗き込む様に俺を見てきた。

「飛鳥ちゃん、案内終わった?」

「あ、う、うん。多分全部見たと思う。…覚えたかはわかんないけど…」

俺の反応に涼太と一くんはプッと小さく笑いながら、

「飛鳥が迷わないように俺が連れて行くから安心して」

「そうそう。移動教室の時は涼太さんが連れて行ってくれるだろうし、迷子になったら涼太さんも僕も見つけるから安心して」

と、優しく笑いながら言ってきた。余りに優しく言うもんだから同じ男に言われたのに顔が熱い…。こんなにカッコいい台詞、女の子に言ってあげればいいのに……今は俺も女の子だけど。

「あ、ありがとう」

赤くなった顔を隠したくて、下を向きながらお礼を言う。そうすると頭に重みが加わり撫でられる。この撫で方は涼太のもので安心した。

「あ、そういえばノート纏めてコピーしといたから。はい、飛鳥ちゃん」

顔を上げれば、折りたたまれた数枚の紙をポケットから取り出し渡された。開いてみたら、俺がサボっていた授業の内容を綺麗に纏められたノートのコピーだった。しかも白黒印刷じゃなくカラーコピー。なんと見やすい!。

「4時間目のはまだコピーしてないから後で渡すね」

パチンとウインクしながら言う一くん。今時ウインク(笑)って馬鹿にするところかも知れないけど、こんな神対応されたのは初めてで

「ありがとう、一くん!!!。お礼、絶対するから!!!」

「お、お礼?、別にいいよ、これくらい」

「だめ!!、する!、お菓子作る!!!」

「へ?お菓子?」

首を傾げる一くんを置いてきぼりにしてるが、もう頭の中は一くんに渡すお菓子のことで頭が一杯だった。だから、涼太が一くんを睨み付け、生徒会長が呆れながら溜息着いてるの俺は知らなかった。






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