女装男子 | ナノ
女装男子、引き続き学校案内される。

右手は未だにぶんぶんと振り回されながら、涼太は一階にある職員室やら特別教室などの説明をしてくれた。適当に、"ここが理科室、隣が準備室"って感じで雑に案内されると思っていたが、意外にも細かく案内してくれて驚きを隠しきれない。

「ここが音楽室ね。選択授業で音楽を選ばない限りあんまり使わないかな。使用する時以外、理科室みたいに鍵が掛かってるからサボり場所としてはお勧めしない」

「俺、真面目に授業受けるからさぼらないし…」

「えー、一緒に昼寝とかしようよ、飛鳥」

「授業があるからダメ」

「ケチだなー」

と、この会話ももう何回したことか。その度に断るけど、ニコニコしながら同じ誘いをしてくるから馬鹿なんじゃないかと心配になって来る。

「じゃあ、休日は」

「へ?」

「休日に一緒に昼寝。うん、それなら授業なんかないし、いいでしょ」

「………休日ならいいけど、涼太、忙しくないの?」

ニコニコして馬鹿っぽいけど、涼太が不良であることは忘れてないし、総長ってことは肝に銘じてる。俺の中で不良って休日も暴れたりしてそうだし、総長なんて不良が集まるたまり場に毎日いかないといけないんじゃないかって思うのに大丈夫なのかって心配になる。

涼太は目を細くし、ふんわりと微笑んだ。

「大丈夫だよ。だから一緒に昼寝」

「分かった。でも、お互い暇な時にしよう?。昼寝なんだから、ゆっくりしたい」

「そうだね。……嬉しいな」

「昼寝出来ることが?。涼太、昼寝出来ないくらい忙しいの?、本当に大丈夫?」

「違うよ。飛鳥と一緒に寝れることが嬉しい。飛鳥、暖かそうだからよく寝れそうだしね」

そう涼太は言うと、キュッと強く手を握ってきた。俺なんかと寝ても特にいい事なんか起きないのに…。

「まぁ、子供体温だから暖かいというより微温いと思うけど…」

「それでいいよ。俺、冷たい布団嫌い」

ひんやりとしたシーツに布団は誰しもが苦手だろう。でも、じっとしていれば暖かくなるのを知ってる俺たちは、苦手であってもそこから出ることはしないし、布団のことは好きだろう。でも、涼太は違うみたいだ。はっきりと嫌悪の表情を浮かべてる。ちゃんと寝れてるのか。

「じゃあ、俺が暖かい布団を用意する」

「お願いね、飛鳥。じゃないと寝れない。怒ってちゅーしちゃうかも」

クスクス笑いながら言ってるが、何処までが本気だろ……。全部冗談だといいな………。淡い期待を抱きながら、彼の顔を見ていたら

「可愛い顔して、そんなに見ないで。ここでキスして欲しいの?」

足を思いっ切り踏んでおいた。











そんな感じにゆっくりとだったが着々と学校の中を案内してくれた。
俺らが最初に回っていた旧校舎の一階は職員室とか校長室、火器を扱う理科室とか家庭科室などがあった。
二階、三階、四階は教室だった。
もう一つある新校舎の方に音楽室とか各教科担当先生方の部屋。そして生徒会室と風紀室があるらしい。らしいっていうのは今、俺はその新校舎を案内してもらってるから、あんまり中を知らないからです。あ、女子トイレは旧校舎の四階にしかなかったよ!、因みに四階は三年生の教室がある階だったよ!、俺、死んじゃう。
一人で行かない方がいい場所は生徒会室と風紀室周辺と屋上らしい。あの涼太が苦い顔していたから、真面目に行かない方がいいと思う。でも、生徒会室ってCOLORのボスが居るところだよな……生徒会長って聞いたし。


「生徒会室とか危ないって言ったけど、新校舎自体に一人で行かない方がいいよ、飛鳥」

「でも、移動教室とかあるなら、この校舎よく使うんでしょ?」

「んー。一人じゃないなら大丈夫かな。俺のチームの奴らなら俺の名前出せば何とかなるけど、あっちのチームは俺じゃどうしようもないからね」

「えっと、涼太はBLACKだっけ。COLORの方は危ないって事?」

でも、COLORは拓麻くんがいるところだよな。拓麻くん、俺のこと馬鹿にしてくるけど悪い奴にも危ない奴にも見えない。

「そういうことじゃないよ。COLORの総長を尊敬してる奴は危なくない。問題を起こすなって指示出てるらしいしね」

問題を起こすなって指示するって、結構学校思い……?。

「ってことはCOLORの総長さんを尊敬してない人は危ない……?」

「正解。基本ここに入学してくるやつってどっちかの組に入りたくて来てる奴が多いんだけど、たまに俺とかCOLORの総長、ここの生徒会長の首を取りたくて偽って入って来る奴がいるんだよね。そんで、そういう裏切者が多いのがCOLOR。だから、気を付けて」

「………気を付けるけど、総長って大変だな。俺、総長さんって偉い存在だから、仲間内で裏切りってないと思ってたけど。そういう訳じゃなかったんだね」

「大変って思ったことはないかな。慣れちゃったし、喧嘩するのは好きだし」

涼太はにぃっと笑う。喧嘩することは本当に好きらしい。でも、裏切られることが好きな奴なんていないだろうし、喧嘩と別問題だろう。それに慣れちゃったってことはそれだけ裏切られたって事だ。

「………慣れたとしても嫌なことあったら話聞くからな」

「え」

思わず、彼の頬に手を伸ばしていた。冷たいけど、ほんのり温かい綺麗な肌。

「愚痴の一つ二つ聞くって事。………喧嘩は程々にな、涼太、綺麗だから傷つけちゃいけません。親友からのお願いです」

手を離し、めっと指を立てる。涼太はぽけっとしてるけど、少しずつ言われたことを理解したのか笑い出した。

「お願いなら守るしかないよね。………俺、愚痴とか沢山あるけど大丈夫?」

「どーんっとこい!!」

「よっ、飛鳥可愛い」

「もう愚痴なんか聞かない」

「拗ねないでよ」

折角聞いてやろうと思ったのに、最後の一言で全てが萎えた。
でも、最初に比べて親友っぽくなれた気がする。





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