女装男子 | ナノ
女装男子、学校案内される。

思ったら吉日と言うのか、涼太の行動は早かった。
行くと決まったら、膝から降ろされて、手を掴まれて、歩き出されていた。一くんは俺が学校案内に行ったという事を先生に伝えるという事で残るらしいが

「拓麻、お前も授業真面目に受けていいんだよ」

「いや、暇だから着いて行くわ。飛鳥といると面白いし」

「俺、面白い事した覚えないんだけど……」

と、後ろから着いてくる拓麻くんに声を掛けたがニヤニヤしながら、

「見てるだけで面白いぞ、飛鳥は」

「なに馬鹿にしてる?、してるよね??」

人の顔見てニヤニヤするってだけで馬鹿にしてるとしか思えないが、こんな事言われたらもう確実に馬鹿にしてるだろう。むーっと頬が膨れるけど、膨らまさせたご本人は『けっけっけ』っと笑っていて凄くムカつく。同じ一般人なら絶対にグーで殴り倒すのに。
でも、そんな事出来る訳ないからジト目で睨み付けていたら

「…………飛鳥」

「ん?、涼太呼んだ?」

隣で立つ涼太を見上げたが、俯いているせいか黒い前髪でどんな表情してるのかは分からなかった。ただ、繋いだ手が更に力を込められて地味に痛い。
さっきまで普通だと感じてたのに、この短時間で涼太を不快にさせる事あっただろうか。うーんと考えたが思い当たる事が見つからず、頭を悩ませる。チラッと拓麻くんを見たが、ゲっとうんざりする様な顔をしたと思ったら、忽ち真っ青に顔色を変えた、本当にこの人達何があったんだろう。不良にしか分からない事なのか……?。

「…俺は飛鳥とサボるから、拓麻は帰ってくれない?」

「は?」

「帰れ」

と、二人とも俺と話す時とは全然違う声を発するから、一瞬誰の口から出たのか分からなかった。でも、不良ならではの凄んでいるあの声。手が痛いなと思っていたが、そんな事とうも彼方に飛んで、この人達怖いよ!!って感情でいっぱいだ。

「………………」

「……はぁ、どっか行けばいいんだろ」

「分かってくれて嬉しいよ。俺は飛鳥と"二人"でサボるからね」

「はいはい。想像以上に入れ込んでるんだな」

「うん。親友と一緒に居ることは特に問題ないでしょ」

「問題ねぇが………飛鳥」

「ふ、ふわっい!!」

怖いよ!!と考えてた俺が突然話題に出た為、また変な声が出た。こんな緊迫した雰囲気になんて水を差してんだ俺。見ろ、拓麻くんなんか吹き出すのを一生懸命に堪えて気持ち悪い顔してるぞ…!、涼太は何時もと変わらずニコニコと『飛鳥、可愛い』と言っていて、可愛くもないし、こいつぶれないなと呆れた。
拓麻くんは笑いを堪えるのに成功したらしく、

「俺は行くけど気を付けてけよ」

とかっこよく言い、そして近づいてきて涼太に聞こえなくらい耳元で囁くように

「特に隣。面倒な奴に好かれたな」

「へ?」

何言ってんのかと疑問を解決することなく、颯爽と拓麻くんは歩いて行った。
んー、確かに涼太が危険人物なのは変わりない。ゲイだし、俺が男だって分かったら監禁するぞ(はぁと)とか言ってきた奴だ。うん、危険人物だ、しかも上級危険人物。
でも、無理矢理ではあったが親友になったらしいし、俺が一番恐れている暴力とかはしてこないだろうし、男だとばれない限り大丈夫だと思うが、拓麻くんが言う事は少し引っかかる。………一応気に留めて行こうかな。

「飛鳥?、考え事?」

「…あっ、ごめん。案内楽しみだなぁって思って」

「本当?、俺も楽しみ。まず何所から行こうかなー」

「行く所そんなにあるの?」

話ながら、涼太はルンルンとして俺と繋がる手をぶんぶん振り回してくるから、子供っぽいなっと見つめていた。地味に肩が痛いけど、こんなに喜んでる人に水差すのはよくないから我慢しよう。
















俺たちの教室は二階の教室にある為、まず一階から案内してくれるらしく、俺たちは一階に降りた。二階とは違って窓ガラス一枚もなくて寒い。ぶるりと震えたら涼太は俺の顔を覗き込んできて

「大丈夫?、寒い?」

「うん、寒い」

寒がりではあるけど、四月でこんなに寒いなんて…。俺、冬越せるかな。もう無理な気がしてきた。タオルケット何枚用意すればいいんだ。

「一階の窓は良く割れちゃうからつけない方針なんだよね。でも、飛鳥がこんなにも寒がりなら、あのクソババアに話通しておくね」

「俺としては何で一階の窓が良く割れるのか気になるんだけど……」

後、クソババアってきっとあの教頭かな。窓ガラスを付けてくれるように話し進めてくれるのは俺にとっては有り難いから、そのまま話し進めてもらいたい。でも、教頭をくそババアって呼ぶのはよくないんじゃないかと思ったが、今朝のことを思い出してフォローする気が失せた。



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