女装男子 | ナノ
女装男子、今度こそ友人ができる。

「そーいえば飛鳥ちゃんは、よくこんな高校に転入してきたね?」

二人の睨み合いが終わり、俺の意識が帰ってきた頃、一くんがそんな質問をしてきた。確かにか弱い女の子がこんな不良高校に望んで転入してくる筈ないだろ。平凡男子も然りだ。俺だってあの高校を中退しなければ、この高校に転入してくる事もなかったし、父さんの無理難題を受け入れる事はなかった。
でも、そんな説明を軽々しく口には出せない、俺の人生が掛かっている。

「えっーと、色々事情があって…」

「へー、事情?」

「その事情はなんだよ」

「いやー、ちょっと口に出せなくて」

「教えろよ、飛鳥」

ずいっと顔を近づけてくる拓麻くん。しつこい男は嫌われるぞ!とか言いたいけど、ヘタレの俺は言えるはずもなくただ目が泳ぐ。チラッと一くんを見れば、丁度目が合い『教えて(はぁと)』と目が訴えていた。
この、気になり男子たちめ!。女子は秘密が多いのだぞ!全く!!言えないけど!。

「んと、えっと、家庭の事情が九割と俺の問題が一割あって……言えないものは言えません!」

「………チッ、つまんね」

「飛鳥ちゃんって頑固だね」

拓麻くんはふんっとふんぞり返り、一くんはにっこりと俺に微笑んできた。怖い、怖いよ……。言って楽になりたいけど、バレたら一くんはきっと涼太に言って、涼太はさっきの言葉を有言実行するだろう……言えるわけがない。

「あっ、飛鳥。LINE交換しよーぜ」

「へ?」

「LINEだよ、LINE。やってねぇならメアド」

「や、やってるけど……何で?」

一応アプリは入ってるけど基本使っていないアプリの一つだ。中退する時に携帯を変えてデータ全部消したから、友人達の番号は全部なくなって、友達登録されてるのなんて母さんと父さんのみだ。後、占いと英語辞書。だから、俺から送ることはないし、親から来ても基本未読無視。最早入れてる意味あんの?って感じだな。
でも、何で交換?。もしかしてこれからパシリとかの連絡は全部ここに送るとか?。え、一応見た目友好的な関係築けてるはずなのに!。

「ぱ、ぱしりは嫌です……」

目をぎゅっと閉じ、両手で無理無理と振っていると溜息と笑い声が。
目をゆっくり開けてみると、赤いスマホを片手でちょっとムスッとしてる拓麻くん。怒ってる?、今の言い方が悪かったのかな。

「ご、ごめ「パシリになんかするかよ。普通にダチになりてぇだけなんだけど」へ?友達?」

「と言うか、僕たち、もう飛鳥ちゃんとは友達かなって思ってたんだけどね。まさかパシリだとは、ふふっ」

「飛鳥、ケータイ」

「へ、あ、はい」

拓麻くんにそう言われ、慌てて制服のポケットにしまってあったスマホを出す。
あれ、友達?。俺達が?。いつ?。つか、平凡の俺が不良の友達になっていいものなのか……今は女の子だけど。

「スマホカバー、兎かよ。ここまで可愛いもん使ってんなら一人称変えろって」

「本当だね。しかもピンクうさぎ」

と、二人は俺のスマホカバーを見て笑っていた。因みにそのカバー買ってきたの父さんだからな。誕生日プレゼントにそれ貰って、流石に使いたくなかったけど、泣きながら使ってと縋り付いてきたから仕方なくだからな。

「あ、僕も登録させてね」

「あ、はい。どうぞどうぞ」

にっこりと微笑む一くんに流され、拓麻くんと一くんを友達登録してしまった。本当にいいのだろうか。

「あのー、拓麻くんに一くん」

「ん?」

「何かな?」

「俺なんかがお二人のご友人になってもいいの?。俺、普通の人だよ、不良じゃないよ?」

喧嘩なんかできないし、逃げるの専門の俺が不良の友達になっていいのか。本当パシリじゃないのかな。
二人は同じタイミングで溜息を一つ。本当仲いいなとか眺めてたら、

「不良でも普通の、しかも女の子の友達は欲しいものだよ、飛鳥ちゃん」

「つか、お前が喧嘩出来そうにねぇのは見れば分かるし、パシリ何か面倒くせぇもん頼むかよ」

「いや、でも」

「あー、面倒だな!。俺たちは飛鳥のダチになりてぇの、文句あんのか」

「いえ!滅相もございません!!!」

思わず頭下げたよ。ゴツンと机とぶつけたけど、そんなの関係ない。怒らせたかもって心配もあったけど、何よりこんな俺を友達にしてくれたことが少し嬉しかった。

「ふ、二人とも!」

「まだ文句あんのか」

「拓麻、怒るなって。何かな?飛鳥ちゃん」

「あ、ありがとう。友達にしてくれて。俺、凄く凄く嬉しい!」

顔を上げてお礼を言った。
パシリとかじゃない、普通の友達にしてくれてありがとう。何にも出来ないし、不良怖いから、やっていけるか心配だったけど、何か力貰えた気がしてワクワクしてる。それに何より絶対ぼっちルートしかないと思ってたから、便所飯とかじゃなくなって純粋に嬉しい。

へへっと思わず笑っていたら、二人がぼんっと音がなりそうなくらい突然真っ赤に染まった。え、何かあったのって聞こうとしたら



「お前ら、何で俺より先に飛鳥と交換してんの」



と、怖い声が背後からして肩にと頭に重みが乗った。
えっ?と肩を見れば、首に腕が回されていて、頭には見覚えのある顔が。

「り、涼太さん」

「帰ってきてたのか」

「さっきね。ねー、飛鳥。俺とも交換…しよ?」

にっこりと一くんとは何かが違う笑い方をし、目の前に黒いスマホをチラつかせてきた。

でも、登場の時の声とは違う、朝の時と同じ声で少し安心。でも、俺のパーソナルスペースを一気に0地点にしてきたから少し震える。一応俺だって人見知りにコミュ障だ。あの噛み方見れば分かるだろう。

しかも、うんって頷く前に拓麻くんは涼太に俺のスマホを渡していた。何勝手に!って怒ってやりたいけど、交換するのは別に構わなかったから、そのまま放置することにした。

「んー……、これでよし。飛鳥、一日五回は俺の所に話しかけてね」

「へ?五回?」

「ん。ちゃんとこういうので話さないと交換した意味ないでしょ?」

まぁ、確かに。俺も、前の学校で交換した奴いたけど、一度も話さずに名前だけって人が何人もいて交換する意味あるかなとか疑問には思っていた。
涼太の言う通り使わなきゃ勿体ない気がする。でも、俺から話しかけるのはちょっと勇気がいるな……。

「分かったけど、涼太も話しかけてね?」

と、首を傾げながら頼むと

「……分かった。約束するよ」

涼太は驚いた顔を一瞬見せたが、直ぐに何時ものへらっとした顔に戻った。よかった、これなら五回なんて直ぐに済みそう。

「あ、拓麻くんと一くんも送った方がいい?」

二人とも交換してたことを思い出し、二人を見ると青い顔してブンブンと首を振っていた。そんなに振ると首が取れそうだ。
でも、送らなくていいなら楽だ。実際涼太は兎も角こういうので俺から話しかけに行くのはリアルで話しかけに行くのと同じくらいの勇気がいる。三人分の勇気なんて俺は持ち合わせていない。

一安心して涼太からスマホを貰らえば、そのまま手を掴まれた。少し引っ張ってみても離してくれず、新手のいじめかと首を傾げていれば

「飛鳥」

「何?涼太。……あ、話す前に手を離してくれると嬉しい」

「それはちょっと無理。それより」

俺の手より重要な話なのか。 と言うか、離してくれないとなんか恥ずかしい。二人分の視線が手に集まってる気がする。

「飛鳥はあいつらの友達だけど、俺とは親友だよね?」

「へ?あいつら?。拓麻くんと一くん?」

「そう」

「う、うん。友達だけど、涼太は親友?」

二人には友達になろう!って言われたけど、涼太から友達又は親友になろう!って今、初めて聞いたんだけど。
それに、俺の将来的な話で涼太と親友になると色々大変なことになりそう。こいつゲイだし、俺がタイプみたいだし、俺は男だし。
と考えていたら、ギュッと手に力を込められた。

「いっ!?」

思わず悲鳴が出る。痛いよ!?骨が軋んでる!!。痛すぎて声が出ず、目で訴えているとにっこりと笑われ

「親友……だよね?」

「は、はひいいい!!」

俺はそう叫ぶしかなかった。




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