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スッと何かが冷めた時僕は瀬奈ちゃん胸から引きずり出された。
「ば、化け物!!!瀬奈に近づくな!!!!」
「……あ…」
瀬奈ちゃん、奏くん、クラスのみんなが何かを言ってる。でも、僕の耳には英くんの声しか聞こえない。
やっぱり僕は化け物だったんだ。
白くて目が紅くて、片目がなくて。
みんな優しくしてくれてたから忘れていた。ううん、違う。甘えてた。
少しだけみんなと”同じ”になれたと思ったんだ。
化け物なんかじゃない、同じ”人間”に。
でも、英くんの言う通り僕はおかしい、みんなと違う、化け物。
夢の時間が終わったんだ。
ガツンと頭を思いっ切り叩かれて様だった。
痛くて痛くて泣きそうだったけど、泣けなかった。だって事実だったから。
「なんとか言えよ、化け物!!!!」
肩を思いきっり押された。踏ん張る事が出来なくて、そのまま倒れる。後ろは壁。頭打ったら痛いだろなって他人事の様に思った。目をギュッと閉じ、その痛みを待った。
「……………あ、れ」
「いい加減にしろ」
安心する匂いが僕を包んでいた。
頭上から恭君の声がした。さっきまで英くんしか聞こえなかったのに。
「き、恭!そいつ化け物だから逃げろよ!!」
英くんが急いで近づいてきた。この人も、恭くんが大事なんだ。
なら化け物の僕は近づかない様にしなきゃ。これ以上何も言われたくなかった。
預けていた身体を起こし、恭くんと英くんから離れる。英くんはほっとしたような顔をしていた。あぁ、これが正解なんだ。化け物は誰とも近づかない方がいいんだ。
なんだ、昔、と同じだ。
僕はその場から駆け出した。後ろから声が聞こえたけど、誰か分からない。でも、
「那智っ!!」
ありがとう、恭くん。化け物の僕に”思い出”をくれて。
「ばいば、い」
零れた言葉は誰にも届かず、風が涙を掬った。
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