泣き虫うさぎ | ナノ
44

スッと何かが冷めた時僕は瀬奈ちゃん胸から引きずり出された。

「ば、化け物!!!瀬奈に近づくな!!!!」

「……あ…」

瀬奈ちゃん、奏くん、クラスのみんなが何かを言ってる。でも、僕の耳には英くんの声しか聞こえない。

やっぱり僕は化け物だったんだ。
白くて目が紅くて、片目がなくて。
みんな優しくしてくれてたから忘れていた。ううん、違う。甘えてた。
少しだけみんなと”同じ”になれたと思ったんだ。
化け物なんかじゃない、同じ”人間”に。

でも、英くんの言う通り僕はおかしい、みんなと違う、化け物。
夢の時間が終わったんだ。


ガツンと頭を思いっ切り叩かれて様だった。
痛くて痛くて泣きそうだったけど、泣けなかった。だって事実だったから。

「なんとか言えよ、化け物!!!!」

肩を思いきっり押された。踏ん張る事が出来なくて、そのまま倒れる。後ろは壁。頭打ったら痛いだろなって他人事の様に思った。目をギュッと閉じ、その痛みを待った。







「……………あ、れ」

「いい加減にしろ」

安心する匂いが僕を包んでいた。
頭上から恭君の声がした。さっきまで英くんしか聞こえなかったのに。

「き、恭!そいつ化け物だから逃げろよ!!」

英くんが急いで近づいてきた。この人も、恭くんが大事なんだ。
なら化け物の僕は近づかない様にしなきゃ。これ以上何も言われたくなかった。

預けていた身体を起こし、恭くんと英くんから離れる。英くんはほっとしたような顔をしていた。あぁ、これが正解なんだ。化け物は誰とも近づかない方がいいんだ。



なんだ、昔、と同じだ。




僕はその場から駆け出した。後ろから声が聞こえたけど、誰か分からない。でも、

「那智っ!!」

ありがとう、恭くん。化け物の僕に”思い出”をくれて。






「ばいば、い」

零れた言葉は誰にも届かず、風が涙を掬った。



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