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「恭、恭、恭!やっと見つけたぞ!どこにいたんだよ!!」
もじゃもじゃの人はバタバタと恭くんの元に駆けつけてきた。誰だろう、この人。初めて見る人で緊張と恐怖で身体が震える。
「チッ、めんどくせぇ」
「那智ちん、大丈夫だからね?」
瀬奈ちゃんが近づいてきて、僕をその場から連れ出してくれた。あの人誰って聞く前に奏くんに頭撫でられ、僕と瀬奈ちゃんの前に壁となるように立った。
「めんどくさいって酷いぞ!友達だろ!」
「何時、俺が、お前と、友達になったんだ。勘違いしてんな」
「なっ!俺と会った時に友達になっただろ!!」
「俺はなったつもりねぇけど」
恭くんは眉間に皺を寄せながら、もじゃもじゃくんを見ていた。もじゃもじゃくんは興奮したように何か喋ってる。
この二人、お友達なのかな………でも、恭くんは違うって言ってるから違う?でも、もじゃもじゃくんは友達って……んぅ??。
「那智ちん、大丈夫?」
「せ、なちゃん」
「あの五月蝿い奴、本当嫌だけど同じクラスなんだよ」
「そ、英永和って五月蝿い奴。なっちゃん、耳痛くない?」
「はな、ぶ、さくん……」
何処かで聞いた名前だ。誰かに教えてもらったっけ?。あんまり覚えてないや。
んーっと考えていたら、もじゃもじゃくんである英くんが奏くんの前にいた。恭くんとのお話し終わったのかな。
瀬奈ちゃんの手をぎゅっと握ったら、瀬奈ちゃんはにっこり笑って握り返してくれた。
「奏!後ろにいるの誰だよ!教えろ!」
「英くんには関係ないでしょー?」
「英じゃなくて永和って呼べって言ってるだろ!!」
「絶対やーだ」
「むきーーー!!!!」
何となくだけど奏くんと瀬奈ちゃんは僕と英くんを会わせたくないっぽい。僕もあんまり知らない人とは会いたくないから、小さく奏くんの背中に隠れる。近くにいた修斗くんや円くんたちがまた僕たちの壁になってくれた。後でお礼言わなきゃ。
「な、なんでそんなに隠すんだよ!」
「英くんに見せるのはもったいないからー」
「つか、お前ほんとうるせぇ」
「恭!こいつら、俺に意地悪するんだ!!なんとかしてくれよ!!」
「は?。俺がこうしろって言ってんだけど」
「そうなのか!!!、恭まで俺を苛めるのか!!」
奏くんや修斗くんたちの壁で英くんと恭くんがどんな顔してるのか、全然分からない。会話からして僕と瀬奈ちゃんを囲う壁は恭くんの指示らしい。ちょっと嬉しい。
「那智ちん、嬉しいことあったの?」
顔が緩んでたらしく、瀬奈ちゃんが覗き込んできた。”皆がこうしてくれた事が嬉しい”と声に出そうとした時だ、
「瀬奈の声がするぞ!!!!ここか!!!!」
今までより大きな声が教室に響いた。キンっと耳に響いて耳を塞いだら、壁と壁の隙間から、もじゃもじゃの頭が出てきた。
「ひっ!」
「那智ちんっ」
「おいっ!英!!」
ギュッと瀬奈ちゃんに抱きしめられたが、僕の目は英くんの目から離れなかった。寧ろ驚愕の表情を向ける英くんを見てしまったからだと思う。
突然の出来事で色んな声が飛び交った。でも、微かな声が僕の耳に届いた。
「……………化け物」
やっぱり僕はおかしいんだ。
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