泣き虫うさぎ | ナノ
42

僕がケーキが食べ終わった後、にぃは教室まで送っていってくれた。郁くんも付いてくっ!って言ってたけど、にぃが郁くんに何かお仕事頼んでて来れなくなっちゃった。だから、また会おうねって約束してきた。

「はい、教室に着いたよ。道、ちゃんと覚えた?」

「う……」

「まだちょっと難しいか、ごめんね。じゃあ、風紀員室に来たかったら電話して?いいね」

「う、ん。わか……た」

「偉い偉い。じゃあ、もう俺は行くから授業頑張ってね」

にぃは手をひらひらさせて元来た道を戻って行った。風紀委員長さんだからお仕事沢山あるのに、時間取らせちゃったな……ちゃんと学校の中覚えないととぎゅっと手を握る。
でも、その前に教室に入るのが緊張する。教室から廊下まで聞こえる声がしてから、何かお話してるみたい。邪魔にならないかな、もうちょっとここで待ってた方がいいかな、でもにぃは授業頑張ってって応援してくれたから受けないとだし………、ウジウジ考えちゃって嫌になるけど、ドアに手が伸ばせない。
恭くんたち、教室にいるかな。いてくれたら少し安心するかも。いなかったら寂しいし、まだ慣れてない教室に一人いるのは怖い。
想像してみたら怖くなって、目をぎゅっと閉じる。そしたら

「那智、おかえり」

ガラガラというドアが開く音と、求めていた声。

「……え…あ……」

「ほら、入るぞ。授業が自習になって、俺もだが奏も瀬奈も那智と話したがってる」

ぐいっと恭くんに手を引っ張られて、そのまま勢いで教室に入る。辺りを見渡したら、最初みたいに誰も僕のこと変な目で見てない。寧ろ

「お、香水ー!おかえりー」

「そーいや、那智ちゃんの歓迎パーティとか開かね?」

「賛成賛成!」

「じゃ、俺が主催者!」

「それはずるいよ、奏ちん!僕の方が絶対主催者の方が似合う!」

「瀬奈さん、主催者に似合うとか似合わないとか関係ないかと……」

「んぅー?なんか言った?」

「すいやせんした!!」

温かい雰囲気と目で迎えられた。それに僕の歓迎パーティって?。きょとんと首を傾げてると頭上から

「那智がこのDクラスに来てくれたのが嬉しいかったらしくよ、お前の為にそういう催し開こうって」

「僕の…た、め?」

「おう。だから、主役はちゃんと学校来いよな」

恭くんは柔らかな微笑みを僕に向けると、再び僕の手を引っ張り、僕の机に連れてく。恭くんは椅子に座ったので、僕も慌てて座ると、瀬奈ちゃんと奏くんがバタバタと僕の元に駆けつけてきた。

「那智ちーん!甘いもの好きだよね?、ショートケーキとチョコケーキどっち好き?」

「なっちゃんはウサギ好きだよね?」

と、色んな質問を投げかけてきた。ビックリしたけど、一つずつ答えた。僕は喋るのが遅いのに、二人とも待っててくれて優しい。
後から後から二人じゃないクラスメイトからも質問が来た。名前が分からなくておろおろしちゃったけど、みんな名前も教えてくれた。

「俺の名前は修斗な。好きに呼んでくれ」

「ワシは円やー!」

「俺!俺は!虎徹!」

「え、と……修斗く、んと…まど、かくんと虎、徹くん」

「「「可愛い!!」」」

クラスメイト全員から名前を伝えられて、ちゃんと覚えたかちょっと心配。一人一人思い出して、指を折るけど……うーん、抜けてそう…。
しょんぼりしてると、恭くんに頭を撫でられた。

「あいつら一気に覚えろって思ってねぇから安心しろ。これからゆっくり覚えてけ」

「…ん。がんば、る………ありが、と、う…恭く、、ん」

「おう」

恭くんも奏くんも瀬奈ちゃんもクラスのみんなも優しくて、このクラスの生徒でよかった。
ふふっと口元が緩んだ時、再びガラガラと扉の音が教室に響いた。




「あーー!!!!恭みっけ!!!!」



僕より少し背が高いモジャモジャした子が現れた。







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