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にぃがくれたケーキを食べ終わったと同時に、授業終わりのチャイムが響いた。
「あ……」
「あー、那智ごめん。授業終わる前には教室に戻す予定だったんだけど」
「……だ、いじょう…ぶ。ぼ、く、食べるの……遅、いか、ら」
「そんなことないよ。ゆっくり食べて欲しいし、那智のペースでいいんだよ」
にぃは頭を撫でてくれたけど、授業サボっちゃった申し訳なさで一杯。恭くんが明日も来て欲しいって行ってくれたから、明日も来ようかなって思ってるから、唯でさえ馬鹿な僕は真面目に授業受けないと呆れられちゃう。
「……ひっ」
「泣かないで、那智。勉強なら、兄さんが教えてあげるから、ね?」
落ち込んでて気づかなかったけど、いつの間にか僕はにぃの膝の上に座っててぎゅって抱きしめられてた。
あったかくて少し安心する。
にぃの教え方はとても上手で馬鹿な僕にも分かるけど、時間取らせちゃった……。
ぎゅっとにぃの制服を掴む。
「いやー、那智先輩は偉いですねー?。俺なんか、サボれてラッキーとか思ってましたよ」
と、背後から声が掛かった。郁くんだ。
サボれてラッキーなのかな??。
「神凪、那智に余分なこと教えるな」
「きゃーん、委員長の二重人格に痺れるうう」
郁くんを見ると、鼻を押さえながらソファをバンバン叩いていた。郁くんはたまに良く分からないこと言うし、変なことするけど面白いなぁって思う。でも、
「にぃ……にじ、ゅうじんか、く?」
「……………神凪、責任とれ」
「ゑ、いや、へ?」
「那智、神凪が言うことは基本嘘だから信用しないようにね?」
嘘?なの、郁くんがいうことって??。嘘つきは嫌いだから、郁くんと距離を取りたくて、にぃの胸に密着。
「委員長それはないっすよ!?。那智先輩、俺は嘘つきじゃないです!」
郁くんは焦ったかのように、僕を手招きする。ちらりと郁くんの目を見ると本当に焦ってるようだった。目は正直者だよって、お父さんが教えてくれたんだ。
「え、那智?」
嘘つきじゃ無さそうって思った僕は、ゆっくりとにぃの膝から降りて、郁くんの所に向かう。
「えっーと、那智先輩?」
近くで見ても郁くんの目は綺麗だ。
嘘つきの目じゃなさそう。
郁くんに向けて手を伸ばすと、え?え?と凄く挙動不信だった。
僕も自分で何がしたいのか分からないけど、思わず手を伸ばしちゃったんだよね。何か驚かせてごめんねって思って、手を下げようとしたら、
「神凪、那智が抱っこして欲しいんだとよ。凄く嫌だが、譲ってやる」
「…………だだだだだ抱っこですか!?。いいんですか!出ますよ、鼻血!?」
「なんで決定事項なんだよ。出すな、那智を汚したら……分かるよな神凪?」
「………サー、イエッサー」
あれ、僕、抱っこされるの?とぼけっと聞いていたら、郁くんの膝の上。
さっきからこんなんばっかりだー。
「わわわ、可愛い、天使が目の前にいる!!」
「うぐっ」
「神凪!!力を弱めろ、那智が死ぬ!!」
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