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「冷泉、十朱、不知火、今授業中の筈だぞ。何故こんなとこで騒いでる、後神凪もな」
大好きな声が聞こえる方に顔を向けたら、何時も僕に見せてくれる顔じゃないにぃがいた。ちょっと怖い。確かに今授業中だったはず、僕たちサボっちゃってた……。
「委員長ー、そんな怒らないで下さいよー、と言うか委員長!、弟さんいたんですか!?教えてk「神凪黙れ」うぃっす」
カツカツとにぃがこっちに近づいてくる。
きっと怒ってる、怖いにぃに嫌われ……た?。
「…っん…ひっく……」
「な、那智?、泣いてるのか?」
そんなこと考えたら涙が出てきた。
恭くんがそれに気づいたらしくゆさゆさと揺らしてくる。それに伴って奏くんや瀬奈ちゃんも近づいてきた。
「うっわー、なっちゃん泣いちゃったよー?」
「本当那智ちんを泣かせるとか本当屑風紀委員長ー」
奏くん、瀬奈ちゃん違うよ。お兄ちゃんは何もしてない、僕がサボったから、皆引き連れてサボったのが悪いのと言おうと、口を開いた時には、僕は恭くんの背中から離されにぃの腕の中にいた。
「…………あっ…」
「なーち、泣かないで」
頭上から何時もにぃの声。
何時も声だと思うとさっきより沢山の涙が目から出てきた。
「チッ」
「恭ちーん、イライラしてんのは俺たちもだからどうどう抑えて」
「あばばば、委員長のこんな素敵スマイル見たの初めてっ!写メ写メって携帯忘れたぁぁぁ!!!」
「神凪、五月蝿いって俺言ったよね?。
それと冷泉達、授業はどうした。質問に答えろ」
「えー、俺たちはなっちゃんに学校見学の道案内してあげてたのー、ほら俺たち優しーからさー?」
「優しいとか兎も角時間帯を考えろ。……今回は"学校見学の道案内"って嘘に乗ってやるからさっさとクラスに戻れ。行くぞ、神凪」
にぃはそれだけ言うと僕を抱っこし直して、来た道を戻ろうとしたけど、
「くそ委員長、那智を離せよ」
「……冷泉、お前が誰かに固執するのは珍しいな。俺の弟が気に入ったのか」
「うっせぇ、まぁ確かに気に入ってるぞ。それに那智は俺たちと同じクラスだ。一緒に戻りてぇんだけど?」
「少しばかり那智に用があるから、後で俺が送り届ける。だから、先に戻れ」
そうにぃは言うと今度こそ歩き出した。にぃの背後から恭くんと瀬奈ちゃんの声が聞こえたけど、にぃの手と胸で耳が塞がれちゃって聞こえない、うー。
「委員ー長、置いてかないでくださいよー?」
「あー、すまん。忘れてた」
「ひどいっ!!。つかつか、那智先輩泣き止みましたかー?」
目の前でひらひらと手を振る郁くん。
ごめんね、塞がれちゃって聞こえないんだ。
「………にぃ?」
「ん?どうした、那智。何か痛いとこある?」
にぃの名前を呼んだらやっと手を外して貰えた。聞こえる聞こえる。
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