泣き虫うさぎ | ナノ
32

恭くんの背中越しに聞こえた声は今まで聞いたことの無い声だった。
まだ知らない人への警戒心の強さは半日ぐらいで治る訳もなく、僕はただ恭くんの背中隠れた。
恭くんの名字を知ってるから知り合いなのかな??。でも、さっきから恭くんは一言も喋らないのはおかしいかもと、考えてたら

「冷泉、無視すんなよ。めんどくせぇな」

「……………じゃあ、話しかけるな。つか、こんなとこにいていいのかよ。仕事溜まってる癖によ」

「ダルいから休憩だ、それくらい許せ」

「無理。お前らのせいで俺たちにまで関係ねぇ仕事が回ってきてんだよ」

「………めんどくせぇ」

と、知らない人からの一言でぽんぽん会話をし始めた二人。僕、置いてかれてるけどいいや、怖いし。

「さっさと使えねぇ奴等をリコールしろ、それか俺たちが潰すぞ?」

「………怠いからパス」

「うぜぇ」

背中越しでも分かるピリピリした雰囲気。喧嘩?かな。
後、りこーるってなんだろ。食べ物?乗り物?勉強のことかな??。にぃに今日帰ったら聞いてみよう、どんなモノなんだろ……。

「で、冷泉。その背後にいる奴誰?」

突然知らない人が僕のことを話題に上げた。気づいてた?。あ、でも気付くよね、足元見ると二人分の足が見えるんだしとか、意外にも冷静に考えられた僕。
ちょっとは成長したのかもって思うけど、多分僕の手をまだ離さない恭くんの手のおかげかもしれない。気持ちが落ち着いて安心する。

「この学園の生徒会長の癖に生徒の顔も認識してねぇんだな」

「認識も何も俺からじゃ、冷泉が被って何も見えねぇよ。……なんだ、お前が誰かを守るとか珍しいな」

「お前には関係ねぇだろ」

「まぁな。関わる気もねぇよ、めんどくさいだろうしな」

と、言うと知らない人………生徒会長さんはコツコツと足音を鳴らして僕たちから遠ざかって行った。
関わる気もないって言ってたけど、本当だった。顔見せろとか言われるのかなとか思ったけど一安心。

と言うか、さっきの人、生徒会長さんだったんだ。声しか分からないけど。

とりあえずひょっこって恭くんの背中から出て、恭くんの隣に立つ。
恭くんはまだ生徒会長さんが歩いて行った方を睨んでいた。やっぱり仲、悪いのかな。





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