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*
人の気配がない場所かつ那智が来たことがある場所を手当たり次第行った。
だとしても裏生徒会室と初めて会ったあの広場に食堂ぐらいしかない。
そしてやっと食堂で那智を見つけた。
流石に1時間目では人の気配は全くしない。
「やっと見つけた……」
食堂の隅で丸くなって座っている那智の肩が震えた。一人になりたかったんだろうがそんなことできなかった。
「変な質問して悪かったな、もう忘れろ」
「……………」
返事なし。
こいつにどんな過去があったなんて知る訳がねぇ。あいつに聞くってこともできるがそれも癪だ。それに過去は過去でしかない。
「………読めねぇなら俺が読み方を教えてやる。書けねぇなら書き方だって教えてやる、だから怖がるな」
だから、過去の事を思って今からどう過ごすかが大事だと俺は思う。
読めねぇだろうが、書けねぇだろうが今から覚えればいい、それだけのことだ。
「…………きょ……く、ん」
泣きそうな声で泣そうな顔で那智は俺を捉えた。
「ほら泣くな、那智の泣き顔はなんか苦手だしな」
「………にぃと、お……なじ」
「…………それは最悪だ」
そういえば少し晴れたような顔で笑う那智。やっぱりそっちの顔の方がいい。
「授業戻んのめんどくせぇ………。那智、何か食うか」
「??」
「甘いもの好きなんだよな、那智は。
奢ってやるから食うぞ」
「お、なか……す、いt「いいから」
那智の脇に手を入れ、無理やり立たせて腕を引っ張る。
文字の読み書きも心配だが、この細さも心配だしな、サボりがてら何か食わせよう。それにもうそろそろあいつらも来そうだしな。
「………冷泉?」
だが、雰囲気ぶち壊しな奴がやって来た。
恭said end
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