泣き虫うさぎ | ナノ
29

そんなこんなで僕は恭くんに教科書を見せてもらいながら授業を受けた。
黒板に書いてある字をマネしながらノートに書いてるけど、恭くんは未だにノートを出さずに、僕を見てる。ずっと恭くんから視線を感じて恥ずかしい。

でも、書かなくていいのかな?。
と、心配もあるけど、そんなに見ないでって感情が心を占めてる。

「………はぁ……」

ため息出ちゃうのも仕方ない。












授業は楽しい。
でも、ちょっとだけ問題があった。
恭くんの視線って問題もあるけど、これはにぃにも迷惑かけるからこっちの方が重大な問題だ。

「………………よ、めない」

ぼそりと零れた僕の言葉。
隣の恭くんには聞こえて無かったみたいで、何も言ってこないし何もしてこない。

漢字が読めない。
それが僕の中で今重大な問題だ。

黒板に書いてある文字を写してはいるけど、読み方が分からなくて本当ただ写しているだけ。ひらがなは読めるけど、高校生だからかな、殆ど漢字が黒板を埋めていく。

最近になってやっとひらがな、カタカナの読み書きが出来るようになったのに。ちょっと悔しい。それに悔しいって気持ちよりも、またにぃに迷惑かけちゃうことの罪悪感で一杯だ。

とりあえず写そう。
そして、謝ってノートに写した文字をにぃに読んでもらおう。

そう暗い気持ちを抱きながらも、手を動かしていく。書くだけなら簡単だしね。
これで読めとか言われたら僕、どうしていいかわかんないし。

と、安心していたその時

「んー、では次のページから……那智くんに読んでもらおうかの。初めての授業じゃし、声も聞きたいからのー」

「!!」

まさかの展開。
おじいちゃん先生は故意で僕を指名した訳じゃなさそうだけど………ど、どうしよう。

読めないのに。





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