28
一時間目の授業は現代文だったらしい。優しそうなおじいちゃん先生が教室に入ってきて、現代文の教科書を持っていたからわかった。よかった、優しそうな人で。
そういえば新先生は何を教えてくれる先生なんだろう……今度聞いてみよう。
ぼけっーと先生の方を見てたら、奏くんと瀬奈ちゃんは顔を伏せ出した。体調悪いのかな……と、心配したんだけど
「……ん……食べ……る…」
「すーすー」
と、寝言と寝息の声が。
まだ一時間目だけど疲れたのかな??。
隣の恭くんの方に目を向けると
「っ!?」
何故か目があった。というか、恭くんは僕の方に顔を向けて頬杖していた。何?何!?、僕の顔に何かついてるかな?、何かしちゃったのかな?!。僕の心の中はパニック状態だ。
「なぁ那智?」
突然恭くんが話しかけてきた。まぁ、僕たちまだ見つめ合ってる?から話しかけてくるよね。もし、僕が何かしてたならやっぱり怒られるのかな……と、友達じゃなくなるとか!?。
「や、だ……」
「あ?何がだよ…?」
恭くんは怪訝な顔で僕を見てきた。あれ?違う?。いやでもちゃんと説明してないから、まだ確証はないよね。
「まぁいい。那智、お前教科書とかあんのか?」
「きょう……か、しょ??」
教科書?………もらった覚えはない。
言われてみて気づいたけど、僕全部の教科の教科書なんて持ってない。今日のバックの中身はお弁当とノート一冊だけだった。
ふるふると首を横に振る。もしかして、恭くんは僕が教科書持ってないこととか知ってたのかな?。あ、でも言ってないから気づいたのかな?。
恭くんは自分の鞄から一冊の本を出し、机を動かして僕の机と合体させた。
「え??」
「俺も教科書見るから一緒に見るか」
「!……あり、がと!」
わぁ、一緒に見ていいんだ!。なんか嬉しい!。恭くんは本当に優しいっ。自分でも分かるくらい口角が上がっているのが分かる。
「お、冷泉。初めてじゃの、私の授業で教科書出すのは」
と、聞き覚えのない声が。声がしたほうを見るとおじいちゃん先生が立っていた。あの声はおじいちゃん先生の声なのか。
そして、何故か周りのクラスメイトたちは僕たちの方を見ていた。
そういえば、おじいちゃん先生は恭くんが初めて教科書を出したって言ってたよね?。いつもは教科書出さずに授業受けているのかな……。
「うるせぇよ、ジジイ。余分な事を言うんじゃねぇ」
チッと舌打ちをしながら恭くんは言った。
おじいちゃん先生はそんなことを気にしないようで和かに笑いながら、うむうむと頷いている。そして、僕と目が合ったような気がした。
「ほぉ、べっぴんさんがいるものだ」
と、僕に微笑んできた。
べっぴんさん?、誰のことだろ…瀬奈ちゃん?。
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