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瀬奈 said
キャーー!可愛いっ!!!、そう思った。初めてなんだよね、自分以外の子を可愛いとか自分から自己紹介したりその他色々。まぁ、その全部をかっさらって行ったのが僕の目の前で嬉しそうに笑う那智ちんだ。
この学園ってさ、男子校だし都心から離れて、言い方変えると隔離されてる。そんな学園だから恋愛対象とか性欲対象なんて男だーけ。僕もよく餌食になってるしねー、まぁ僕に勝てる奴なんて恭ちん以外いないんだけどさ。伊達に空手黒帯持ってないから。
あ、うざーいチワワにも勝てる自信あるよ?、あいつら騒ぐ以外脳みそ働かないみたいだしね。あ、違うか、媚び売って尻尾振るのも長けてるっけ。
じゃなくて、目の前のこの子っ!。
那智ちんってさ、絶対無自覚天然さんでしょ?。人嫌いって雰囲気で伝わってるけどさ、こんな呑気に楽しそーに笑ってるんだよ。
辺りを見渡せば顔を伏せて震えてる奴らや、下半身抑えたり突然立ち上がって教室を出てく奴らばっか。どうせ目的地はトイレでしょ?、寂しく抜いてろつーの。あ、那智ちんをオカズにされるとか最悪。後でシメる。
恭ちん、奏ちんも同じこと考えてるのかガン飛ばしながら辺りをチェック。
でもさ、耳まで真っ赤に染まってる恭ちんは怖くないし、鼻血垂らしてる奏ちんなんてバカの極みだよ。あれ?この二人でチェリーではないはずなんだけどなー。
「……あ、みん、な……いない」
そんで持って那智ちんがクラスメイトの大半がいないことに気づいた。
まぁ、いなくなってる原因は那智ちんなんだけど………無自覚って恐ろしい。
「みんなお腹痛くなってトイレに行っちゃったみたいだよー?」
那智ちんの問いに顔をいつの間にか綺麗にした奏ちんが応えた。間抜けな姿見せればよかったのに………チッ。
「おな…か?………く、すり」
と、那智ちんは机の上に置かれたリュックサックからこれまたウサギの形をしたポーチを出した。本当ウサギが大好きなんだねー、覚えておこっと。
ポーチの中からは胃薬と分かりやすくデカデカと書かれた薬を取り出してきた。何でそんなの持ってんだろ?お腹、弱いとか?。
「………お、いてく……る」
那智ちんは薬を掴んで椅子から降りた。
もしかして、机の上にでも置いてくるのかな?。那智ちん、人嫌いだから手渡しするはずないし………でもさ、
「那智ちーん、渡さなくても大丈夫だよ?。みんなトイレ行って治るだろうし、それに男子足るもの自己管理はしっかり!……ってね?」
渡さなくていいから、うん。
あ、別にそんな『僕、気配りできる優しい子』アピールじゃないのは分かってるけど、那智ちんが誰かに優しくしてるとこなんて見たくない。
………って、これは嫉妬ってやつ??。
あれー?那智ちんは友達なはずなんだけど?。
「……?…そうな、の?」
んーと考えてたらいつの間にか椅子に座り直した那智ちんがいて何か安心した。
やっぱり僕、おかしいのかも。
瀬奈said end
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