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「あっ!那智ちんが笑ってるっ!」
と、いつの間にか僕の前の席に座っていた瀬奈ちゃんが叫んだ。
笑ってる?僕が??。
あっ、昨日恭くんに笑うなって言われたから気をつけようって決めてたのにっ。
怒るかな……、そう思い恭くんの方を見たら口元を隠してそっぽ向いてた。
……もしかして見てなかったとか?。でも、瀬奈ちゃん大きな声で言ってたから聞こえてはいるはず……だよね?。
「なっちゃん、笑うと………可愛いさ倍z「黙れ」ぐふっ」
そして、恭くんの前の席に座る奏くんは僕を指差して何か言おうとしたけど、恭くんに殴られて言えず仕舞い。顔を抑えて蹲ってて痛そう……。
「那智ちん、いいことあったの?。んーまぁ、席の場所は恭ちんのとこが一番いい席だけど那智ちんのいいとこだよねー」
「……ば…しょ?」
「あれ?違うの?。寝てもバレにくい席じゃん、そことか」
きょとんと僕の方を見る瀬奈ちゃん。
寝てもバレにくい??。……この席ってそんなにいい席なのかな?。
「じゃー、何でなっちゃんはそんなに嬉しそうな訳ー?」
と、復活した奏くんが話に入ってきた。体、頑丈なのかな。
「………席が……あ、ることに嬉し……かっ、た」
「「席があること?」」
こくんと頷く。二人とも理解できてないみたいで困惑してる。変なこと言ったからかな………。
「那智はこのクラスの一員だろ。席があるなんて当たり前だ」
と、今度は恭くんが話に入ってきた。
その日一言にジーンと胸の辺りがポカポカする。約一ヶ月来なかった、来る気がなかった僕を一員って言ってくれた。他のクラスメイトはどう思っているか全然わからないけど、席があるってことはいてもいいよってことだと勝手に解釈。
恭くんの言葉は魔法みたいだ。
これで僕の中の魔法使いは二人目だよ、にぃと恭くん。
「……あり、がと……う」
クラス全員の視線が僕に集まっていることにも気がつかないくらい舞い上がってて再び恭くんの約束を破って
微笑んでいた。
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