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恭くんの腕に寄りかかり一安心。よかった、暗いままにならないで笑ってくれて。
「交通事故か?」
と、突然頭上から声をかけられた。
恭くんの方を向くと、恭くんは前を見据えたまま再び同じことを言った。
「交通事故にでも那智はあったのか?」
ふるふると首を横に振る。
交通事故で失くしたんじゃない。
刺されたんだから。
「…………そうか」
それだけ聞くと恭くんは足を止めた。なんでだろ?って見回してみたら、D組と書かれた表札?があった。中から新先生の声も聞こえる………新先生来るの早いなぁ。
後ろから僕たちを追いかけてきた奏くんたちも到着した。奏くん、ちょっとボロボロだけど大丈夫かな……瀬奈ちゃんは何処かしらスッキリしてるけど。
「恭ー置いてくなんて酷すぎー」
「待つ理由もねぇだろ」
「元はと言えば恭のせいでしょー」
「那智ちーん、ここが僕たちの教室だよ!」
瀬奈ちゃんはそんな二人を無視して、扉の前で両腕を広げて叫んだ。僕たち遅刻してきたのにそんなに叫けんでいいのかなって思ったのは内緒にしておく。
「うるせぇ。とっとと開けろ」
「開けてください瀬奈様って言ったら開けてあげるー」
「チッ………奏」
「なんで俺を指名すんのかなー、恭ー。
瀬奈ちゃん、なっちゃんが入りたがってそうだから退こうねー?」
「ちぇー、恭ちんの敬語を見れるチャンスだったけど………那智ちん、みんなバカでウザい奴らだけどいい人だから怖がんないでね?」
そう瀬奈ちゃんは僕に言うと勢い良く扉をスライドさせた。
バンッ!って音がした為か一斉に僕たちの方に視線が向いた。急いで顔を恭くんの肩に埋める。怖がんないでって言われたけど染み付いた恐怖心は薄れるはずがない。
「那智ちん………」
「瀬奈ちゃん、仕方ないことだろー?」
近くで寂しそうな声が聞こえた。誰だか分かっているから罪悪感が増す。ごめんね、瀬奈ちゃん。
「てめぇらどこで油売ってやがったんだ」
「あ、八神ちんさっきぶりー!」
「不知火……八神ちんは止めろ。八神先生様って呼べ、クソガキ」
「そういいながら実は気に入ってるんでしょー、やがみーん」
「お前たち二人は次から次にバカみたいなあだ名をつけるよな、小学生か」
「おっさんには言われたくないよ、八神ちん、ボコボコにするよ?」
「瀬奈ちゃんに同意ー、婚期逃しまくりの中年さんにそんなこと言われるとか……ムカつくんだけど」
「よし、後でお前ら指導室に連行な」
と、喧嘩らしき声がする。新先生と奏くんに瀬奈ちゃんは仲良くないのかな……?。
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