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「那智、フード外しとくのはお前の為にでもあるんだぞ?」
「……ぼ、く……?」
恭くんは僕と顔を合わせながら説明し始めた。
「ずっとフード被ってたらその下はどんな顔なのかって好奇心が湧くだろ?。あー、昨日の奏みたいにな」
ギロっと恭くんは奏くんを睨みつけた。謝ってくれたから僕は気にしてないのに……。奏くんは暗いオーラを纏いながらヘラヘラとごめんねーって呟いた。
そんな姿を見た瀬奈ちゃんは奏くんを殴ってたけど………うん、痛そう。
「那智、誰かにフードを無理矢理外されるのは嫌だろ?」
嫌だ。自分ならまだしも人にやられるなんて真っ平ごめんだよ。
こくんと頷いて恭くんの話の続きを待つ。
「でも、奏みたいな奴が無理矢理外しに来るかもしれない。なら、自分から外したまま過ごしてた方が那智自身が勝手に外されて嫌な思いしなくて済むと思ったんだが……どうだ?」
………外しておいた方がいいかもしれない。恭くんの説明はわかった。僕は納得したけど
「こ……わい」
「怖いって視線がか?」
こくんと頷く。無理矢理外されるのも嫌だけど、周りの視線が嫌だ。
あんな差別的な視線は受けたくない。
「………昨日みたいに俺の肩に顔をうずめておけば少しは軽減されるか?怖さは」
あの時はちゃんと被ってから今回とは少しだけ違うけど、人が沢山いた食堂に行くまで安心はしていた。それに恭くんの匂いは好きだな、僕。
周りの声は聞こえるけど、僕の視界には周りの人は見えないから大丈夫かな。誰かと目を合わせる心配もなくなるし。
「………わか……た」
「ん、偉いぞ」
優しく頭を撫でられた。初めて直接撫でられたかもしれないなぁ。
「いいなー!俺もなっちゃんを抱っこしたいー」
「僕だってっ!恭ちんずるい!」
「うぜぇ………」
恭くんはそう言うと二人を置いて再び歩き始めた。恭くん、自由人なのかな。
恭くんの肩から顔を覗かせて見ると、僕に気づいた奏くんと瀬奈ちゃんがニコニコしながら追いかけてきた。
何かいい事あったのかな??。
こてんと首を傾げながら考えてたら頭上から
「那智、職員室から出るぞ」
「………っ!」
ぎゅっと恭くんの制服を掴み、怖さを間際らせる。大丈夫、出たら顔を埋める。
ガラガラと扉をスライドさせて、
僕の本格的な学校生活が始まった。
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