17
昨日にぃが学校に行こうって言われてからあっという間だった。僕が嫌だと言っても聞いてくれなくて、準備はどんどん進んだ。明日だけでもいい、行きたくなかったら明後日は行かなくてもいい、でも今日は行こうってにぃは言った。
一日だけならお弁当届けに行った日みたいに我慢できるかなって思って僕は渋々頷いた。
そして、今新品同様の制服着て、ブレザーの下にクリーム色のうさみみパーカーを被り、学校用に昔買ったリュックサック背負って僕は職員室前にいる。
「大丈夫だよ那智。先生方には話つけてあるから、すーって通って担任に話してきな?」
ぶんぶんと首を振る。
なんでにぃも一緒に来てくれないの。
そんな気持ちが伝わったのか応えてくれた。
「今から行かなきゃいけないとこがあるんだ。遅れて那智の味方が来ると思うから我慢できる?」
味方?。誰、味方って。
にぃは僕の頭を撫でながら、僕が職員室に入るのを待っている。一緒に入ってくれる気はないらしい。
「わ……か、った」
と、言うとにぃはにっこり笑って背中を少しだけ押した。押されたおかげで一歩進んでドアに触る。手が少し震えてる、うう、帰りたい。振り返ったら頑張れ、って口パクでにぃは伝えてきた。
諦めよう、にぃは来てくれないし帰らしてもくれない。ドアを開けるしかない。
手に力を入れて扉をスライドさせた。
ガラガラと音をたてながら扉が開いた。
体を滑り込ませて職員室に入って見たら、誰も僕の方を見てない。先生たちは忙しそうに何か作業していた。
よかった。注目とか浴びたくないから見てくれなくていい。
確か僕のクラスの担任は職員室の隅の方にいるってにぃは言ってた。縮こまりながら目的の場所に進む。その時も違う先生とはすれ違ったけど誰も僕の方を見てはこなかった。にぃのおかげかもしれない。
キョロキョロとしながら歩いていたら目的の場所についた。
先生は顔に女の人が写った雑誌をのせて、ぐたっーと座っていた。はっきり言って先生には見えなかった。
「……す、み………ませ、ん」
と言ったけどピクリとも動かない。寝てるのかな……。先生の服を少し引っ張る。
早く用事を終わらせて早くここから立ち去りたい。誰も見てないって言っても人が多くて怖くて仕方ないもん。
「…あぁ?」
「ひぃっ!?」
先生は低い声を出しながら顔にのせた雑誌を取る。その下は
「……や、がみ………さ…ん?」
「あぁ、那智か」
お父さんの知り合いの人だった。
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