泣き虫うさぎ | ナノ
15

突き飛ばされたけど小さな体から出る力は、俺を少しよろめくぐらいしか影響が出なかった。

なっちゃんは自分の髪を鷲掴みし、泣ながら何か叫んだ。多分『見るな』って。

そして、ドア側に俺や瀬奈ちゃん、はっちーがいたからかな、ドア側には進まないで部屋の隅に逃げ出した。座り込んで何かブツブツと呟きながら。

後悔しても遅いけど、後悔だらけだ。
うわー、こんな爆弾抱えてたなんてー。
軽い気持ちでめくったけど、この子にとってはめくられるのは自殺行為と等しいんじゃないかなー。憶測だけどさ。
だって、

「や、っだ……見え…にぃ、嫌われ……る」

って言ってるしなっちゃん。
その容姿で何か言われたのかな、昔。


瀬奈ちゃん、はっちーも唖然してる。恭だけ眉間に皺を寄せてる。
誰も動かないのはどうしていいのかわからないから。それに今近づいたら拒絶されそうだ。あー、柄にもないけど謝り倒したい。






謝り倒したいって思うけど、一歩も動かないのも事実。皆からはお調子者って言われてるけど、流石にこの場はお調子者で通せる雰囲気じゃない。

ってうだうだ考えてたら、
動き出した人がいた。

まぁ、恭なんだけどねー。
眉間に皺を寄せながらも俺を押しのけて一歩一歩なっちゃんに近づいてく。
うわー、俺にはあんなマネできないね。信用してるしてない云々より人に嫌われたくないのは俺も一緒。うん、俺は天邪鬼だよ。

恭が近づいてくにつれ、なっちゃんの震えも大きくなって、益々体を小さく丸めてく。小動物みたいだな、本当ー。

なっちゃんと恭の距離があと一メートルってとこで恭が立ち止まった。

「那智」

そう恭が呼ぶとなっちゃんはビクッと飛び上がる。そしてまた呟き続けるんだ。

「き……らわ、れる」

って。俺のせいでこの状況になったけど、恭はなっちゃんをどうするのかな。部屋から追い出しちゃうのかなー、いつもの恭ならしそうだけど。
でも、今日の恭は"いつもの恭"じゃない。
いい意味か悪い意味かはわかんないけど、変わってるのは俺には分かる。

「那智、俺はお前の友達だ。嫌いになる訳ねぇだろ?。それにその容姿……」

「ごめ、ん…ひっ……さい」

「うさぎみたいで俺は可愛いと思うぞ」

それだけ言うと恭はガタガタと震えるなっちゃんに手を伸ばし、頭を撫でた。

俺は二人を観察?してたら、背後から二人が飛び出した。瀬奈ちゃんとはっちーだ。二人共一直線になっちゃんのとこに向かい、恭の左右に座り込む。

「那智ちん、肌凄い綺麗だね!、羨ましいー!流石、僕が認めた友達だよ!」

「那智先輩は可愛いです。……えっと天使?みたいです」

泣きじゃくるなっちゃんに二人共手を伸ばして、恭と一緒になっちゃんの頭を撫で続けた。











俺だけ、一歩も動けなかった。
なっちゃんは悪い意味で泣き続け、結局泣き疲れて寝ちゃった。
その後なっちゃんのお兄様がやって来て、怒鳴り散らしながら颯爽となっちゃんを攫っていったね。

それに続くように皆部屋から出て行って、今は俺だけしかいない。


「あぁー、俺、超だせぇーのー」


あの子に何があったかなんて俺は知らない。でも、俺みたいな過ちを起こす奴が、なっちゃんを泣かす様な奴が減って欲しいなー。


「……………ごめん、なっちゃん」


次会ったらちゃんと謝ろう。
ごめんねって。
俺も友達になりたいって。

気がついた頃にはなっちゃんの事で頭がいっぱいだった。




奏said end




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