11
そろそろ恭くんが持って来たクッキーがなくなりそうになった頃に、
『キーンコーンカーンコーン』
と、チャイムの音が響いた。
授業が終わったのかな?。でも、この部屋も外の廊下も静かだ……。
「那智、もしかすると三人くらい人が来るかもしんねぇ」
「え……?」
恭くん以外にも誰か来るの……?。僕が知らない人だよね、絶対。怖くなってギュッと恭くんの裾を掴んでしまった。
恭くんはそんな僕の頭をゆっくり撫でてくれて、
「大丈夫だ。派手な奴らだけど那智に危害は与えねぇよ。それに何かしてきたら俺が始末しとくから泣くな」
まだ泣いてないよって言おうとしたけど、恭くんの優しさに少しだけ甘えよう。そのまま僕は恭くん側に倒れたけど、受け止めてくれた。あったかくていい匂い。
はぁと少し落ち着いてきた頃に扉が開く音が部屋に響いた。
「あぁー、疲れたァー!」
「とか言いながら瀬奈ちゃん、寝てたけどねぇ♪」
「はい、奏ちん静かにしようねー」
「瀬奈先輩、おはようございます」
「うん、はっちんズレてる」
「はっちーがズレてるのは、当たり前でしょー?」
と、三人分の声が聞こえた。多分恭くんが言ってた人達だ。女の子みたいな高い声、ふわっとした声にビシッとした声。
ガタガタと恭くんの制服を掴む手が震えてきた。にぃ、にぃ、怖いことになっちゃったよ。
「大丈夫だ………。
チッ、お前らうるせぇんだよ」
恭くんが僕の手と自分の手を重ねてきた。
あったかい。
「あっ、恭ちんごーめん、許して♪」
「サボりの恭に言われたくないなぁ」
「サボったんですか、恭先輩」
「瀬奈キモい。
うるせぇよ、俺の勝手だろうが」
サボり………僕のせいだ。僕が恭くんを引き止めたからサボっちゃったんだ……。
「ふぇっ……ご、ごめん、ね、恭くん………ふぇぇぇ」
「お、おい!。何、那智泣いてんだよ」
僕のせいだ、僕が悪いんだ。僕と関わったから、恭くんを困らせたんだ。
「那智?誰それー?」
「恭、その丸まってる子誰?。
………もしかして!?」
「恭ちん!責任とんなきゃ!!」
「ちげぇよ!!。つか、うるせぇんだよ!。那智が怖がるだろうが!」
頭上で怒鳴る声。それにもビクつく。怒られる、嫌われる。一人にしないで。
「チッ……那智、何で泣いてる?」
「ひっ、ん……ぼ、僕のせ、いで……サボ、らせた……か、ら」
「は?………それは違う。俺が好きでサボっただけだけだ、お前のせいじゃない。
だから、泣くな」
「うっひっ……ん……」
よしよしと撫でながら、背中をぽんぽんと叩いてくれた。徐々に嗚咽が止んで少しだけ落ち着いてきた。
「見て、瀬奈ちゃん、はっちー。恭が笑ってるし、何あの甘さっ!!」
「奏ちん!事件だよ!明日嵐だ!」
「恭先輩、変な物でも食べませんでしたか?」
「どういう意味だ、お前ら」
と、再び恭くんと三人が喋り出した。仲良さそう………。もしかして裏生徒会の人たちなのかな??。
「で、恭ちん。その子誰ー?」
そして遂に僕の話に変わってしまった。
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