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ケーキケーキっ!とケーキの妄想をしていたら、恭くんが立ち上がり
「那智はそこで待ってろ。直ぐ帰ってくる」
と言い残し、裏生徒会室にあった僕たちが入ってきた扉とは違う扉を開けて入って行ってしまった。んー……なんだろうあの部屋。気になるけど待ってろって言われたから大人しく待ってよう。
ぽーっと扉を見ていたらガチャリと開いて恭くんが出てきた。
片手にクッキーを持って。
「勝手に瀬奈のから取ってきたが……まぁいいか。あ、那智、お前クッキー食えるか?」
と歩きながら聞いてきた。そして僕が答える前にソファに座った。謎の部屋からこのソファ、距離があるのに早い……足が長いんだね、絶対。
「食べ……れ、る。………好き」
「そうか。なら、よかった……やるよ」
僕には眩しいくらいの綺麗な笑顔を浮かべて、僕の手にクッキーを置いた。
恭くんが持ってきたのに、僕がもらっていいの?、恭くんが食べたかったんじゃないの?。
「那智が考えてる事何と無く分かるな…。
言っとくが、俺は別にクッキーが食べたい訳じゃねぇからな?。ただ那智にあげたかっただけだから受け取れ」
「い、いの?」
「あぁ。寧ろ貰ってくれねぇと処理に困る」
いいのかな……僕なんかが貰っちゃって。
こんなに綺麗にラッピングされたクッキーなんて貰うの初めてだし。それに僕には綺麗な物なんか似合わないんだ。
「あークソ、いいから食べろ」
「うぐっ?!」
と、恭くんはラッピングを解きクッキー一枚を僕の口の中に詰め込んだ。突然のことで色々パニックだけど、口は勝手に咀嚼する。
あ、美味しい……。
「う、美味いか?」
僕は即座に頷く。にぃ特製のクッキーも凄く美味しいけど、このクッキーも凄く美味しい。こんなに美味しいモノ、僕が食べていいのかなって思っちゃうくらい美味しい。
「そうか、なら良かった……」
と、恭くんは笑った。
こんなに美味しいクッキーを僕だけ食べていいのかな。恭くんも食べた方がいいよねと思い、恭くんが持ってるラッピングが解かれたクッキーを一枚持って、
「き、ょうくん………あー、ん」
「は?」
キョトンとした顔で恭くんは僕を見た。
あ……ダメだったのかな。
にぃには何時もやってることだから、ついやっちゃったんだけど。
僕は手を引っ込めようとしたけど、腕を掴まれて
「………んー意外とイケるなこのクッキー」
恭くんは僕の手からクッキーを食べた。
僕がやり始めたことなんだけど、凄く恥ずかしい。食べてくれて嬉しいかったんだけど………何か恥ずかしい。うー、よく分からないや。
「ほら那智、あーん」
「!……あー、ん」
それ以降僕たちは何故かクッキーを食べさせ合った。お気に召したのかな、恭くん。
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