08
にぃと沢山約束をして、今僕は恭くんの肩に顔を埋めながら、再び抱っこして貰ってる。だから、今どこなのか全く分からない状態だ。たまに周りから悲鳴とか聞こえて体が震えるけど、恭くんがその度に背中を優しくさすってくれるから安心する。
それに、さっきチャイム?の音が鳴ってから、パタリと静かになった。
「やっと静かになったな。……降りるか?」
「………お、りる」
そう言って僕は顔を上げた。
本当は迷惑じゃなければ、抱っこしてて欲しかったけど、そんな我儘言って嫌われたくないから素直に従った。
恭くんは僕を降ろしやすいように脇に手を入れたんだけど、
「やっぱり那智、俺に抱っこさせられてろ」
と、抱え直された。
あれ?何でかな………早く降りなきゃいけなかったとか。ぼ、僕が渋がってたからめんどくさいとか思って………
「お、おい、唇噛んでんじゃねぇよ。
やっぱり抱っこは嫌だったか、歩くか?」
恭くんは慌てたように話出した。
「な、何で………抱っ、こ……?」
「は?………那智、本当は抱っこされたかったんだろ?」
あれ何で分かるんだろ?。僕、言ってないよね?。と、疑問の顔をしていたのか恭くんが答えてくれた。
「抱っこしてて欲しいな、って顔してたんだよ、お前。だから、歩かせるのを辞めて抱っこしてる。……本当はして欲しくなかったのか?」
ううん、して欲しいよって言っていいのかな。迷惑じゃないかな。だって、僕重たいしずっと抱っこしてくれてるから疲れてきたと思う。
「なーち、迷惑とか考えんなくていい。
………はぁ、じゃあ俺が勝手に那智を抱っこしたいからしてる。那智には拒否権はない、これでいいな」
と、恭くんは自己完結をして再び歩き出した。ため息、めんどくさそうな声。
僕の返事が遅くて呆れたんだよね……。
「ご……めん、な…さ、い」
「謝んな。他の言葉にしろ」
他の言葉って何?。"謝んな"ってことは謝罪以外ってことだよね。
「…………あ、りがと……う?」
「疑問形かよ。
まぁいい、どうもいたしまして」
と、クククと笑いながら僕の頭を撫でた。
正解だったのかな?、よかった。恭くんが笑ってくれてよかった。
はぁと一息ついて再び恭くんの肩に顔を埋める。やっぱり安心する。
にぃがいない今、安心できる人は恭くんだけ。だから、嫌われたくない。
「後もう少しで目的地だ。もうちょっと我慢してろよ」
こくんと頷く。
目的地って言われても、その目的地を知らないから何とも言えない。
でも、少しだけわくわくとドキドキしてる。
どこに連れってくれたのかな、恭くんは。僕にとっては全てが新鮮だけど恐怖の対象でもある。だけど、恭くんが言う目的地には、何故か恐怖心が湧かない。不思議だ。
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