05
まさか恭せんぱ……じゃなくて恭くんと同い年とは思ってなかった。しかも同じクラス。学園に来るかはわかんないけど、嬉しかったなぁ。にぃ以外にこの学園に知り合い?顔見知り?ができたことに。
でも、名前呼びにタメ口?まで許してくれて、恭くんは本当優しい。こんなイケメンさんと話せる事も有難い事なのに名前呼びにタメ口だよ。嬉しいことこの上ない。
手を引かれながら考えてたら、D組の靴箱に到着したらしい。僕も恭くんも靴を脱ぐ。
「那智、自分の所分かったか?」
先に靴をしまった恭くんが話しかけてくる。うん、見つかったんだけどね……。
僕は目的の場所を指差す。
「ん?………あぁ、那智じゃ届かないな」
靴箱の一番上の段に僕の番号があったのだ。悲しいことに背伸びしても届きそうにない。
真ん中辺りだったらよかったのに……。
「ほら、靴貸せ」
ん?と振り向いた時には、持っていた靴を持って行かれ靴箱にしまってくれる恭くん。一連の流れが綺麗すぎて唖然。
紳士様だ、本当に。
「あ、りが……と……」
「これくらい構わねぇよ。
上履きは持っているか?」
こくんと頷いてショルダーバッグから、新品の上履きを取り出す。にぃが書いてくれた『かすい なち』って名前入りだよ。
上履きを置いて急いで履く。
待たせちゃ悪いもんね。
「…………行くぞ」
そう恭くんは言うと再び僕を持ち上げた。廊下には人っ子一人いないから恭くんの足音だけ響く。……なんで、僕、抱っこされてるんだろう。
「……だ、っこ……」
「この方が早いからな。それに那智、お前人嫌いだろ?」
体がピクッと少し震えた。
何でバレてる?何で分かるの?。
「俺と会った時怯えてたからな、予想しただけだ。食堂には人が沢山いるからな、俺の肩に顔を埋めとけ」
ほら、優しいよね恭くん。
食堂には人が沢山、それを想像してみたら怖くなった。にぃにお弁当を届けなきゃだけど、逃げ出したいくらいだ。
早速恭くんの肩に顔を埋める。わぁ、いい匂いがする………変態臭いね、僕。
「早速埋めるか」
クククと恭くんは笑いながら続ける。
「那智、匂い嗅ぎ過ぎだぞ。そんなにいい匂いか、俺の」
顔を埋めながらこくんと頷く。
何の匂いかは分からないけど、安心する匂いだ。にぃとはちょっと違う安心する匂い。
「素直に頷かれると反応に困るな……」
肩から顔を離し、恭くんの顔を見てみると耳の辺りが赤く染まっていた。
「ご、めんな……さ、い」
「ん?謝ることじゃねぇよ。俺こそ褒めてくれてありがとうな」
耳の赤さを隠すように僕の頭をわしゃわしゃと撫で回す。犬みたいだ、僕。でも、嫌いじゃない。
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