04
恭 said
那智は俺に抱っこされながら、空に手をひらひらと翳している。俺はそんな姿を見ながら今まで浮かんできた疑問を解消することにした。
一つ、フードを外さないか。
まぁ、質問してみたら肌が弱いらしく紫外線対策とし被ってるらしいが、口元しか見えないくらい深く被る必要はないと思う。まぁ、僅かに見える肌と手は、人とは思えない程白いから念入りな紫外線対策なのだろうか。
しかし、先程俺に向けてきた笑顔?は天使だと思わせるくらい可愛いかった。まぁ、口元しか見えなかったが、微かに見え隠れしている白い頬が赤く染まるとことか色っぽい。
二つ、香水という苗字。
この学園には同じ苗字の奴が二人いるが、二人揃ってめんどくせぇ奴らだ。一人はこの学園の理事長、性格が歪んでると思わせるほど根ちっこい人。もう一人が、風紀委員長かつ俺たちを縛ろうとしてくる怠い奴。そんな奴らと那智が繋がってるとは考えたくもない。
三つ、こいつはこの学園には来ていないのか。
この学園は無駄に広いが、食堂に行くのに迷うか?普通。それに入学式は一ヶ月前に終わってるから、食堂への道くらい覚える筈だ。……流石に出会って今日の奴が、学校来てねぇのか、なんて不躾な質問聞けないが。
四つ、初めて会った時のあの怯え方。
あの怯え方は尋常じゃない。あれは以前、人から何かされた、言われたから生まれた怯えだろ。もしかするとそれがトラウマの原因かもしれない。
そうこう考えてるうちに靴箱に到着した。
ゆっくり那智を下ろし、
「那智、お前の靴箱はどこだ」
「………し、らない」
は?
「にぃ、に……聞い、て……きま、す」
そう言うと、那智はポケットからスマホを取り出した。
自分の靴箱の場所を知らないって言ったよな、那智は。これは決定だな。……那智は不登校児だ。訳は知らねぇが、早くも不登校になるとは……何があったんだ?。そんな情報は俺のとこに回って来ねぇはずがねぇんだが。
「き、恭せんぱ……い」
「……あぁ、なんだ」
うさぎの形をしたシリコンケースに包まれたスマホを両手で持ちながら俺を見上げてくる。
「二ね、ん……で、ぃ組…十三ば、ん…」
恐らく那智の兄から教えて貰った組と出席番号を伝えている。二年D組か…俺と同じクラスだな……………はぁ?!
「な、那智。お前二年生なのか……?」
こくんと頷く那智。ま、マジか。こんなちっせぇ奴が二年生……。そう言えば、四月に一回だけ教室に行った時窓際の席が空席だったような気がする。もしかして、いやもしかしなくても、あれが那智の席なのか……。
「せ、んぱい?」
那智はずっと黙ってたことを不審に思ったのか制服の裾を引っ張ってくる。
「あ、あぁ悪い。つか、先輩呼びしなくていい」
首を傾げる那智。どう見ても二年生には、同級生には見えないんだが、こいつは俺のタメ。先輩呼びさせる様な奴ではない。
「那智、俺たちタメだったんだ。同い年。だから、先輩呼びすんな」
少し間があってからこくんと頷き、
「れ、い泉…さん?」
「名前で呼べって外で言っただろ?」
「…………き、ょう…く、ん?」
キャラじゃねぇけど仕方ねぇか。那智なら許せるし。"恭くん"なんて他の奴が呼んだらとりあえず殺す。
「それでいい」
グリグリと那智の頭を撫で回し、手を引いて俺たちの靴箱に向かう。
もし、那智が来てくれれば教室に行ってやってもいいかもしれない。
「あ、後タメ口でいいからな」
名前呼びにタメ口、こんなこと許す奴はこいつが初めてだ。なんで許せるのかは俺にもわかんねぇ。だが、こいつの近い存在になりたいと思う。
恭said end
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