「美しい」

仮面は、放つ。

「…とても、美しい…」

私の頬を撫でながら。

「……ありがとうございます」

私は応える。
人形になれた、私が。

「貴方を人形にして正解でしたね。……少々、魂は歪になってしまいましたが」
「……本望、です」

以前はすらすら喋れたのに、痛い、痛い。
球体の関節に触れられるたびに、じくりと痛い。
痛い。痛い。けれど、叫ぶことは叶わない。
彼が、愛おしそうに木製の体を撫でる。……痛い。

「大丈夫です。直ぐに慣れますから」
「そう、ですか」

仮面の下は相変わらず笑みを浮かべている。
にたりにたり、とても満足そうに。気味の悪いような、それでも純粋な笑い。

「しかし」

それはピシャリと放たれた。

「……死にたくなるような激痛が伴いますが…まぁ、死ねませんしねェ…?」

仮面の下は、笑う、笑う。
恍惚の笑みを、浮かべて。
……ああ、その笑顔が、大好きよ。

「…… 本望、です……」
「そうですか」

彼の言葉はシルクのように滑らかだ。心地よい。
そんなに愛おしそうに撫でたら、痛みが…

「やはり貴方は歪んでいますね…」
「………」
「その歪みが、愛おしいです」
「……!」

嬉しい。とっても嬉しいのに、それなのに、痛みが――。

「ええ、ええ。応えなくて結構です。痛いのでしょう?」

腕の関節を撫でていた指が、私の頬を撫で始めた。それでも痛い。
 いた、い。
彼がフッと吐いた息が、木の肌を騒がせた。

「愛していますよ。……ユキ。」

喜ばしい事なのに。どうしてこんなにも、痛いのだろう……


その痛みに耐え忍ぶ叫びは
闇に溶けて儚い



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