My first love is ...

突然ですが俺、葉山小太郎。恋をしました。
そしてお父さん、お母さん。ごめんなさい。

生まれて初めて本気で好きになった相手は、洛山高校数学教師兼バスケットボール部副顧問の宮地清志先生。

大人の…それも、男の人です。



宮地先生は去年からうちに来た先生だ。
ここが大学卒業して初めてだって言ってたから、年はたぶん23か24…のはず。
現役合格で大学入ったって言ってたもん。
けど、数学はどの先生よりもわかりやすいし、俺たちの話をちゃんと聞いてくれるから生徒からの信頼はすごく厚い。
この学校一と言っても過言じゃないほど。
それだけじゃなく、中・高・大とバスケをやってた上、全国大会へよく行く東京の秀徳出身、それもレギュラーだったらしいからめちゃくちゃ上手い。
監督の白金先生も信用してるから、かなりだ。


「おら、葉山。」

ポンと頭を叩かれた。

「いって…、」

「んなわけねぇだろ。ちゃんと話聞いとけ。」

「ごめんなさい…。」

あと、かっこいいし背も高い(確か191cmとか言ってた)から、女の子の中では普通にファンクラブが存在してる。
才色兼備ってたぶんこの人のために作られた言葉だ。

「はーやーまァ?」

「げっ、せんせ…、」

「轢くぞ。」

ニッコリと素晴らしい笑顔を浮かべているが、その後ろには真っ黒なオーラがある。慣れたけど…でも、恐い!!

「ちょっ、勘弁!」

「じゃあ、今日部活始まる前に校庭5週な。掃除当番じゃねぇし、わかったな!」

「げぇ。」

「ああ゛?」

「わかりました!」

恐いけど、でもこういうとこも意外と人気の1つだったりするんだから人間ってわからない。

(まぁ、俺も好きになっちゃったんだから人のこと言えないけどさー)

授業をやってる時の真面目な表情も、部活の時の厳しい表情も、バスケをやってる時の楽しそうな表情も、もちろんあの黒い笑顔だって好きだ。

(あれ、もしかしてかなり末期…?)

そこまで考えが至ったとこでちょうどチャイムが鳴った。

「んじゃあ今日はここまで。
各自復讐はちゃんとしとけよー。」



「何やってるのよ〜、小太郎。」

「だってさ〜、」

「どうせまた宮地先生のこと考えてたんでしょ?
程々にしとかないと征ちゃんから喝が入るわよ。」

「だって、先生カッコいいんだもん!仕方ないじゃん!!」

「まぁ、それはわかるけどね?でも、叶わないわよ。その恋。」

レオの言ってることは正しい。それに自分でもわかってる。
でも諦めきれないのが人情ってもんじゃないのかとオレは思ってる!

「でもさ〜、」

「お前ら、こんなとこで駄弁ってんなよ。自販機に用があるヤツの邪魔だろうが。」

「宮地先生!」

「すみません。ちょっと小太郎の恋バナ聞いてたら戻るに戻れなくなっちゃって…。」

「ちょっ、レオ!」

それ、本人の前で言うことじゃないって、絶対!!

「へぇ〜。何?お前、バスケ放ったらかしにして女子と遊ぶのか?」

ニタニタとからかってるのが一目瞭然の笑顔。
あ〜もう!

「そんなんじゃないですよ!レオが勝手なこと言っただけですってば!!」

「でも、さっきの俺の授業もどこか心ここにあらずだったけどな〜。」

それはアンタのことずっと考えてたからだよ!……って言えたらどんだけ楽なことか。

「んまぁいいや。
そいや、葉山、お前この前の数Uの小テスト頑張ったじゃん。」

「え?」

「数学嫌いのお前にしてはいい点だったってことだよ。」

手が伸びてきてクシャクシャと髪を掻き回された。

「次の中間、頑張れよー。」

仕上げ、とばかりに頭を叩くとひらひら手を振って戻ってった。


「良かったじゃない、小太郎。」

「…。」

「…小太郎?」

「レオ、」

「なによ?」


「俺、今なら死んでもいいかもしれない。」

やっぱりこの恋は諦められそうにない。


end


2013/01/04.



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