smile smile!
「真ちゃん!一緒に部活行こうぜ?」
そう笑いながら、アイツは今日も駆け寄ってくる。
最初こそ邪険に追い払いもしたが、今ではいつものことだ。
コイツは“めげる”という言葉を、そのスッカラカンの頭の辞書に追加するべきだ。
「って、真ちゃん無視!?」
「五月蠅いのだよ。」
「今日もツンデレだね〜」
ケラケラと心底楽しそうな笑い声を浮かべる高尾。
腹が立たない、と言えば嘘になるが不思議と嫌な感じは消えた。
最初の頃こそ軽薄そうな笑い声だと思っていたが、誰にでもそれを見せるわけではないとわかった。
自分にも最初から見せていたわけではなかった。
笑うこと自体は多いヤツ。
だが、それが本当に心の底からのものは意外と少なかったりする。
「黙れ、バカ尾。」
「ぎゃす!?
真ちゃん、俺の扱い、日に日に酷くなってね?」
「気のせいなのだよ。」
「いーや。絶対なってるね!」
ドヤ!と、顔が言ってる。
…別に、ドヤ顔をする場面ではないと思うのだよ…。
はぁ、とため息を吐く。
これもまた日常化した。
「真ちゃん、ひでぇよ!
今、絶対に「ドヤ顔をする意味がわからんのだよ…。」とか思ってただろ!?」
「あぁ、その通りだ。」
「あれ、マジで?
和成君、ブロークンハートなんだけど。泣いちゃうよ?」
「勝手に泣いてろ。
俺は先に部活に行かせてもらうのだよ。」
「わぁー、待って待って!嘘だから!!」
「なら、さっさとするのだよ。
へらへら愛想笑いを浮かべてないでな。」
軽く、隣を歩く高尾の頭を叩いた。
きょとん、とよくわからない、と言ったような表情で俺を見上げてくる。
「…真ちゃん、気づいてたの?」
「何を言ってるのだよ。」
「俺、これまで気づかれたことないのに。」
「お前の周りにいたヤツらはサルだったのか?」
「いや、それくらい上手く隠してたって言ってほしいかな!?」
…確かに、その演技力は認めてやらんこともないが。
「褒められたことではないだろう。」
「…ですよねー…。」
「だが、」
明らかに肩を落とす高尾。
まったく、面倒なヤツなのだよ。
「高尾和成という人間の1つの顔であることには変わりない。」
「…それってさ、演技してる俺も好きってこと?」
「俺の前で演技したら許さないがな。」
「やっべー…。俺、今世界で一番幸せかもしんない…。」
「馬鹿を行ってないでさっさと行くぞ。宮地サンに走らされたいのか?」
俯いてるせいで良くわからないが、耳が紅くなってるということは顔も赤くなってるのだろうな…。
思わず、その様子を想像して、首を振った。
「真ちゃん。」
「何だ。」
「俺、真ちゃんのこと大好きだわ。」
「ふん。」
知ってるのだよ。そんなことは。
end
葉宮とか書いてて、高緑も語ってたのに初書きな高緑でした。
やっぱり、若干切ない要素が…orz
友人と、
高尾は真ちゃんの前でしか本当の笑顔を見せないといいよね、って話から広がりました。
たまには、ハイスペックじゃない高尾もいいよね、って妄想の産物。2012/09/17.
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