4年前の夏


ピンポーン

めったに告げられるのことのない来客を知らせる音が鳴った。

時間は22時を少し回った時間。
訝しがりながらも、鍵を開け、細くドアを開けた。

「いんじゃねーか。
ならさっさと出ろよ!」

その言葉と同時にぐいと思いきりドアが開かれた。

「よーっス真ちゃん!」

「お前、一人暮らしにしてはいい部屋住んでんじゃねーか。」

ずかずかと部屋に上がりこんでくる人たち。

「邪魔するぞ、緑間。」

「悪いな。」

「一体何なのだよ!!」

そう叫んだ自分に絶対非はない。
なのに、きょとんとした表情でこちらを見てくる高尾と宮地先輩。

「メールしたじゃん、真ちゃん!」

「知らん。」

「まぁ、いいや。
とりあえず呑もうぜ。」

そう言うか早いかプシュと音を立てて缶ビールを一気に呷った。

「お、おい…!」

「緑間、こうなったアイツらが人の話を聞くわけないだろ?」

「酒とつまみは買ってきてあるから、お前も呑めよ。」

ニコニコ、と表現するべきか。
先輩2人は、笑いながら自分にもビールを渡してきた。

納得がいかない。
そう思いながらも、渡されたビールをあけた。



「お前、今医学部だっけ?」

「はい。」

「バスケは続けてんの?」

「まぁ、一応。」

「マジで!?
結局皆バスケ続けてんだな!!」

ギャハハ、と腹を抱え笑い出す高尾。
その笑い方は高校の時と変わらない。
しかし、早くも酒が回ってきているようだった。

「けど、医学部のバスケ部じゃ手ごたえねぇんじゃねぇの?お前にはさ。」

「まぁ、高校のときに比べたら全然。」

「おっ、緑間にしては嬉しいこと言うじゃねーか!」

ちょっと乱暴に髪を乱される。

「ダメなんだ、大学のバスケは。
高校の時の方が面白くって、大学のバスケはつまらなく感じる。」

「それは多分、全員が感じてることだろ。」

「そうだよなー。
あん時は楽しかったわ。」

ゴロンとその場で寝っ転がった宮地先輩。
その目は多分、高校3年間を見ている。

「ぐー。」

静かだったその雰囲気をぶち壊す音が響いた。

「げっ、コイツもう落ちたの!?」

「バカ尾、起きるのだよ!!」

「全然話さねーと思ってたら、どんだけ呑んでんだよコイツ。」

その言葉を受けて、高尾の周囲を見れば軽く10本は空の缶が転がっていた。

「ほんっと空気読めねーな、コイツ。」

「いや、いきなり呼び出したお前も悪いと思うけどな。」

「大坪は変わらず真面目だねー。」

「緑間、タオルか何か貸してやってくれ。」

はぁ、と小さなため息を吐いてタオルを取りに行く。
その間、リビングからはズルズルと引きずる音が聞こえた。


「ったく、手のかかるコーハイだね。コイツは。」

端に追いやられた高尾を懐かしそうに見つめる瞳。

「…何で、急に今日集まったんですか?」

「あー?
だって、今日はお前が1年ときに負けた日だろ?誠凛に。
生真面目君なお前は、一人家で寂しくあの日を思ってんじゃねーかと思って来てやった。」

余計なお世話だ。

そう思うも、口には出せなかった。

実際、その通りだった。
あの日のことを思い出し、未だに忘れられない悔しさでどうにかなりそうだった。


「あの頃はさ、わかんなかったんだよ。
“価値のある負け”ってヤツがさ。」

負けたのに、何か残るわけ?って。

真面目に語り出した先輩に、全員が静かにその言葉に耳を傾ける。

「けどさー、あれから変わったじゃん?
お前も、高尾も……チーム全体の雰囲気とかそんなのが。」

「先輩…。」

「って、何真面目に語らせてんの?お前ら。
轢くぞ、木村の軽トラで。」

「結局お前は、あの頃のメンツが好きなんだな。」

「っ、うっせー!!
俺も、もう寝る!
今日は泊まってくからな、緑間ァ!」

顔を背けるように寝返りを打って、そう宣言した。



「悪いな、緑間。」

「…いえ。
バカ尾が寝た時点で諦めてました…。」

「けどな、最後のアレはコイツの本音だからそれで許してやってくれ。

今でも大好きなんだよ。このメンツが。
だから、こうやって集まる口実作って騒ぐんだ。」

「…はい。」

相変わらず向こうを向いたままの先輩に、何も言わず頭を下げた。

「そんなこと、わかってるに決まってるじゃないっスか!」

「高尾、起きてたのか。」

「宮地さんがちょっと真面目トーク始めた辺りで目ぇ覚めました。」

「しね、バカ尾!!」

「げっ、宮地さん!
ちょっ、タンマタンマ!!」

夜はまだ明けない。


end

結局宮地は皆好きで、全員がバラバラになっても集まりたがってると美味しいです。
宮地以外の3年メンツはもちろんそれをわかっていて、しょうがないなーって付き合ってあげて
高尾と緑間もなんだかんだで先輩たちが好きで、秀徳全員が仲良しなんです。
こんな何年後があればいいなっていう妄想SSでした。



2012/08/15.


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