亡霊は幾夜きみを待てども


「みーやじサン!」

「…何だよ。」

今日もまた無邪気に話しかけてくる後輩。
高尾和成は相変わらずの笑みを貼り付けている。

「いや、何となく?」

「何となくで来るな。刺すぞ。」

「えー、いいじゃないっスか〜。
ほら、俺、宮地サンの可愛い後輩でしょ?」

よし、後で木村からパイナップル貰おう。
コイツに投げつける。

ズズーと紙パックのジュースを吸った。

そいや珍しくコイツの隣に緑間がいない。

…まぁ、俺には関係ないか。



「…ねぇ宮地サン。」

パタパタと廊下を走っていく足音が静かな教室に響く。

「んだよ。」

何気なく窓の外を見れば、サッカーボールを追いかけてる男子が目に入った。

日陰のない校庭で元気だこと。

「お願いです。」

「何が。」

「俺の話、目を逸らさないで聞いてください。」

「別に逸らしてねぇよ。」

「宮地サン…。」

いつになく高尾の声に覇気がない。

こういう状態の時の高尾は正直やっかいだ。

はぁ、と小さくため息を吐く。

「俺、恐いんス。」

「何が。」

「宮地サンが俺から離れていきそうで…。
ウインターカップが終わったら宮地サンは引退して受験に専念して俺からどんどん遠く離れてく。」

それは仕方ないだろう。
今更コイツや俺が足掻いたって何も変わりはしない。

絶対に変えられない事実だ。

「宮地サンは割り切ってるし、淡白だから何も感じないのかもしれないけど…。
でも俺はまだ貴方みたいに大人になりきれない、大人に憧れてるガキなんすよ。」

「アホか。」

「でもっ…!」

「俺だって別に大人じゃねーよ。」

たぶん、お前が思ってる以上にまだまだガキだ。
そんなの俺が一番良く知ってる。
ただ虚勢を張って、そのガキの部分を上手く隠しているだけだ。


昼休みの終了を告げる古ぼけた鐘が鳴った。


「宮地サン…。」

「情けねぇツラしてんじゃねぇよ。バカ尾。」

「バっ…?」

「俺だって、お前と2つしか学年違わねぇんだぞ。」

お前をどうにかしたくて堪らない時なんて山ほど在る。

「そーいうのはな、ウインターカップで優勝してから言えや。」

「けど、っ、」

「待っててやんねぇよ?」

まぁ、少しくらい…コイツが俺に追いついた、と思えるくらいまでは待っててやってもいいかもしれねぇけど。

「おら、戻んぞ。」

「ま、待って…、」

「黙れ。」

未だギャーギャー騒ぐ高尾の口を塞いだ。

「……次は、優勝したら、な。」

顔を紅くしたまま硬直した高尾を置いてさっさと教室を出た。


ーほんとはいつまでも待ってるなんて、言ってやらねぇよー…。


end

目蓋様提出。


2012/09/05.


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